内容説明
トニーはもうこの基地にいないのかもしれないな、と思う。どこか遠くの戦場へ行ってしまったのかもしれない。トニーのいなくなったあとに、またあたらしくアメリカ兵が送りこまれてきたかもしれない。その人たちを待っている父さんやおばあちゃんは、きっと今夜も店をあけているにちがいない。それから森野さんも、ピース・ヴィレッジでいつものように、モジドやほかの人たちと話をしているんだろうな。この大きな空の下で、わたしたちの町はなんてちっぽけなんだろうと思う。小学校高学年から。
著者等紹介
岩瀬成子[イワセジョウコ]
1950年、山口県に生まれる。77年に『朝はだんだん見えてくる』でデビュー。同作品で日本児童文学者協会新人賞を受賞。92年に『「うそじゃないよ」と谷川くんはいった』で小学館文学賞、産経児童出版文化賞を受賞。95年に『ステゴザウルス』『迷い鳥とぶ』の2作により路傍の石文学賞を受賞。2008年に『そのぬくもりはきえない』で日本児童文学者協会賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ミーコ
51
『そのぬくもりはきえない』がとっても良かったので手に取ってみました。こちらも女の子が主役・・・ 色んな事に悩んだりしながら成長して行くお話ちですが、米軍基地が近くにあり 様々な問題が出て来る為 色々考えさせられるお話でした。2016/03/03
tokotoko
27
独特の空気感が伝わる1冊。アメリカ軍基地の近くに住む、小5の楓が語り部の役割。かなり“感性が大人”な女の子なので、鋭い見方や迷いなどの感じ方に、自分と通じるものがあって、全然違和感がなく読めた(自分が未熟だからかも・・・と今、思った)。登場する大人達の描き方も自然で、それぞれみんな魅力的だった。良いとか悪いとかの判断も、この話には出てこない。その自由さが、いい空気を醸し出していたのかな。まだまだ、いろんな人に出会いたいなぁ。そして、ほどよく思い合いながらも・・・自分らしく生きていきたいなぁ。2013/07/15
杏子
15
米軍基地のそばに住む小学6年の楓の心情を淡々と綴ったような文章。とくに何が起こるわけでもなく、楓の父の営む喫茶店タキや、フォーコーナーにあるピース・ヴィレッジという遊技場?を行ったりきたりしながら、楓がいろんなことを考えたり、感じたり…アメリカ兵の屯するそれらの店はいわば米軍基地に迎合する場所である。それに対し、ずっと米軍相手に反核のビラを配り続けている、一つ上の友達、紀理ちゃんの父親がいた…。ずっと違和感なくアメリカ兵らと接し、その行事に出かけていた楓が初めて疑問をもつ。平和とは、戦争とは…身近な物事に2013/05/02
zanta
13
とても思考を刺激される本だった。表面的には、すんなり流れるのだが、その風景と内包される世界観の…大きさ?広さ?とが隔たりがあるようで、空の広さを思うと心の広さがうまく現されているようにも思う。私も航空ショーは苦手なほうなので、小学生の感覚に共感してしまう自分がちょっと恥ずかしい。色々な年齢、立場の人と親しく穏やかに接することができる環境がこの少女を大人にしているのか。私、負けているな。2013/09/11
ぱせり
13
だれかのあとをついていくのではなくて、自分で考えて自分で決める決心をするって勇気がいる。大人でも。「ひとり」という言葉が心に残る。ひとりは寂しくて厳しい。でも、一人ってことはかけがえのないことでもあるのだ。飛行機の轟音ばかり、そしてその音に繋がる戦争のことばかりが頭にあったけれど、轟音がぱたっとやんだと静けさの中、遠くから聞こえるフクロウの声が心に残りました。 2012/03/08