出版社内容情報
細川重男[ホソカワジゲオ]
著・文・その他
内容説明
承久の乱(一二二一年)に勝利し、北条氏が権力を掌握してから二十六年―。鎌倉幕府No.1北条氏とNo.2三浦氏との間で主導権争いが勃発する。若き第五代執権・時頼と三浦家頭領の泰村は互いに衝突回避を模索するが、宝治元年(一二四七)六月五日、ついに仁義なき最終決戦が始まった!
目次
解説編1 宝治合戦を知るために(武士とは何か;鎌倉幕府と武家政権;北条・三浦・安達;鎌倉幕府の政治過程;宝治合戦に至る政治過程)
小説編 黄蝶の夏―鎌倉 一二四七 宝治合戦
解説編2 「宝治合戦」その後(時頼政権の再始動;北条時頼にとっての宝治合戦;北条重時の連署就任;引付方;親王将軍の誕生 ほか)
著者等紹介
細川重男[ホソカワシゲオ]
1962年東京都生まれ。立正大学大学院文学研究科史学専攻博士後期課程満期退学。博士(文学)。中世内乱研究会総裁(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
119
『鎌倉殿の13人』の三浦義村は執権の座を狙いながら決して焦らぬ人物とされるが、その冷徹さを息子や孫は受け継がなかった。武家集団が傀儡将軍を担ぐ体制下で北条優位が確立するのに我慢できず、将軍親政を三浦氏が支える世を望んだ。幕府開設から半世紀余の当時の権力闘争は生の戦闘そのものであり、北条と三浦の最終戦争たる宝治合戦を『吾妻鏡』により解説するだけでなく、小説形式で併せ描くことで鎌倉武士の心情再現を試みる。確かに無味乾燥な史書より面白いが、どこに歴史と物語の境界線を引くかとの問題を素通りしているのが気になった。2022/12/17
六点
119
前半と後半に論述が入り、中盤に小説がサンドイッチされている奇書である。もう少し、登場人物は東京弁のチンピラっぽく話させてほしいなと思ったw。みんな関東人なのだからね。それはそうと、今まで「得宗体制」とか平気で言っていたのが、極めて貧弱な根拠で読んでいたのだなと、感じ入った。史料的価値の怪しい組み立てモノによって学生の皆さんは苦しんでいたのよ。と、腹を立てると同時に、歴史学の面白さはそういうところなのだと一人感動していた。2022/12/09
みこ
41
北条氏による最後の他氏排斥である宝治合戦の顛末を描く。解説編とまさかの小説編による二段構成。小説の方は登場人物の口調がそのまんまヤクザでちょっと読むのがしんどかったが、吾妻鑑が大体こんな感じだというのなら仕方ないか。そもそもこの合戦自体最初から陣営がはっきり分かれていて、関係人物も陣営を移るとかがないので、学術的な解説に終始したら内容が薄くなってしまうのかも。2022/09/27
鐵太郎
28
宝治合戦(ほうじかっせん)とは、鎌倉時代の宝治元(1247)年に起きた鎌倉幕府内の勢力争いによる武力衝突。2022年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の次の世代の物語ですな。結果として北条氏が三浦氏を排除して鎌倉幕府の執権の地位を独占し、事実上武家の第一人者の地位を世襲することになるのですが、そこに至る複雑な過程を解説しています。さらに吾妻鏡より読み取ったその経緯を、作者はなんと小説仕立てでこの本の真ん中に挟み込み、なんとか上手く語り上げようとしています。反則的ですが、こういうやり方もあるのか。2023/04/16
鯖
26
たとえお飾りの摂家将軍でも「鎌倉殿」を中心とした政治を目指す三浦となりふり構わず得宗専制に突き進む北条の戦い。鎌倉幕府抗争史が細川先生にしては硬めな文章だった分、こちらは…、特に小説部分は仁義なき戦いすぎた。三浦光村がえげつねえのなんの。自分の顔を削ぐな。時頼がなんか平和主義者で大河の泰時よりも理想主義者っぽかったな…。光村でさえ時頼の夢女子みたいなとこあった。時頼ひとりの力では得宗専制に歯止めのかけようもなかったんだろうけど。畠山重忠が大河で義時に後を委ねて逝ったように、三浦も時頼に委ねたんだなあ。2022/09/25