出版社内容情報
野間文芸賞受賞作。歌でしか会話ができないバリトンさん、遺髪で竪琴の弦をつくる元美容師、講堂では亡くなった子どもたちの魂が成長している。開かれる「一人一人の音楽会」。世の淵に生きる「おくりびと」を静謐(せいひつ)にいとおしく描く著者のど真ん中の長編小説。
【目次】
内容説明
私の住む家は元幼稚園で、小ぶりの講堂、給食室、「安寧のための筆記室」がある。歌でしか会話ができないバリトンさん、息子を失った従姉。耳にぶらさげた楽器が奏でる音楽会とは?世の淵で死を育てる人たちを静謐に愛おしく描く野間文芸賞受賞作。
著者等紹介
小川洋子[オガワヨウコ]
1962年岡山県生まれ。作家。早稲田大学文学部卒業。88年「揚羽蝶が壊れる時」で海燕新人文学賞、91年「妊娠カレンダー」で芥川賞、2004年『博士の愛した数式』で読売文学賞、本屋大賞、06年『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、12年『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞、19年『小箱』で野間文芸賞、26年『サイレントシンガー』で毎日芸術賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
エドワード
24
待望の中編小説。私はある町の元幼稚園に住んでいる。この町には子どもがいない。なぜなのかは語られない。個性的な住民たち。歌でしか会話ができないバリトンさん。子供の遺髪で竪琴の弦を作る元美容師さん。元幼稚園の遊具で見事に遊ぶクリーニング屋さん。「棺の代わりを果たした資料館のケースが、死んだ子どもが成長するための箱になるわけです」という言葉が出て来る。この言葉を受け入れなければこの作品を楽しむことはできない。「一人一人の音楽会」「結婚式」、静かに人生を楽しむ住民たちは幸福だ。純粋に、人々の温もりが伝わってくる。2026/09/17
あんこ
19
単行本に引き続き再読。単行本の表紙も不思議で好きだったが、文庫版の愛らしい鳥も小川さんらしくて魅力的だった。まだ一度しか読んだことがない『小箱』は十分に物語が身体に染み込んでいるとは言い難く、刻み込ませるようにし再読した。この世かあの世かも分からない世界の対極にありそうな歪さやグロテスクさ、欲望をこれでもかというほどに散りばめ、ただそこで懸命に生きている人間への愛を感じられる逸品。小川さんの小説を読んでいる時間は、俗世から離されて余計な音も思考も入らない贅沢な時間を味わえる。2026/09/11
じゃむじゃむ
2
忘れられなければ(この世の誰かが覚えていてくれれば)死んでいるのも生きているのもおなじようなものなのかもしれない。子を亡くした人々のいつまでも生き続ける愛情が、子を持たない「私」の視点から語られることで、痛々しくも美しくも感じた。2026/09/27
晴々
2
おそらくは私が子どもを持ったことがなく、そして子どもを亡くしたこともないからなんだろうけど、「不思議な話だな……」と思っているうちに読み終わってしまった。亡くした子どもの遺骨や遺髪を加工して、耳たぶから下げる小さな楽器にしてる人たちや、亡くした子どもが今も生きていたらという年齢に合わせて贈り物をガラスの箱にしまい続ける人たちのお話だった。2026/09/18




