出版社内容情報
赤穂浪士の討ち入りで夫の吉良上野介を失った妻の苦悩「富子すきすき」、古着屋で売られていた奇抜な帯を手にした娘たちの選択「藤太の帯」、兄と慕っていた幼なじみへの恋が成就しなかった娘の行く先「堀留の家」など短編6編を収録。
内容説明
古着屋で売られていた奇妙な柄の帯を身に着けた娘たちの運命「藤太の帯」、赤穂浪士の討ち入りで吉良上野介を失った妻・富子の苦悩「富子すきすき」、材木問屋の坊ちゃんと辰巳芸者の楽しくほろ苦い日々「面影ほろり」など珠玉の6編を収録。
著者等紹介
宇江佐真理[ウエザマリ]
1949年北海道生まれ。作家。95年に「幻の声」でオール讀物新人賞を受賞しデビュー。2000年に『深川恋物語』で吉川英治文学新人賞、01年に『余寒の雪』で中山義秀文学賞を受賞。15年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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のんちゃん
29
町娘、女中、武家の妻、花魁、芸者、盗賊の娘という江戸の女達を描いた短編集。どの話もほろ苦い余韻で終わる。やはり宇江佐作品、どの話もその展開と登場人物の心理描写に唸る。私は辰巳芸者の心意気を描いた「面影ほろり」が好き。私の曽祖母は辰巳芸者だったと伯母から聞いた事がある。作中に「深川の女はね、手前ェが悪くないと思えば決して引き下がらないのさ。」とある。実は私にもそういうところがある。曽祖母譲りなのかと読んで笑ってしまった。作家デビューから20年で逝ってしまわれた宇江佐先生。これからも作品を読んでいこう。2024/05/22
ミツツ
24
現代だってもちろん面白い話しは尽きないのに、なぜ時代小説に魅せられるのか?例えば、花魁や辰巳芸者、吉良上野介の妻に市井の娘や大盗賊の娘の生き様などから目が離せないからか。必ずしも幸せとはいえない人生であっても、心惹かれるものがあるからか。なぜだかわからないから、私はまた時代小説を手に取る。2022/11/01
Y.yamabuki
23
表題作の「富子すきすき」は武家を、他の五編は市井の人々を描いた短編集。この五編、淡々としているのに何故か不思議と心に残る。丸ごとハッピーや単なる良い話ではない。けれど、そこには作者の優しさが有り、またそれに引き摺られない潔さもある。その絶妙感が好きだ。しんみりしたほろ苦さを残す話が心地好い。2022/10/06
えりまき
22
2022(146)お久しぶりの宇江佐さん。しっとしとした短編集。「藤太の帯」と「柘榴の家」はちょっとリンク。吉良上野介は赤穂浪士の討ち入り事件でしか知らないけど、奥さんに「富子、すきすき」と囁く「2人の秘密」に人間味を感じてほっこり。「花魁とは『おいらの姉さん』を縮まった言葉」とは、知りませんでした。梶よう子さんの宇江佐さんへの愛に溢れた解説も素敵です。 2022/06/18
ベローチェのひととき
17
妻から廻ってきた本。6編からなる短編集。久しぶりに宇江佐さんの江戸町人物を読んだ。人生の何とも言えない哀愁を感じた。題名の「富子すきすき」は吉良の奥様からみた忠臣蔵が描かれている。個人的には「藤太の帯」が好きである。年頃の娘の一世一代の決断時に精神的に後押しする帯、素敵でした。2024/08/25