出版社内容情報
深尾角馬は藩の剣法指南役も務め、藩主の覚えもめでたい。しかし姦通した新妻、後妻をも無残に斬り捨てた角馬の狂気に、周囲は恐れる。やがて一人娘の不始末を知り……。武骨にしか生きられなかった剣客の壮絶な最期までを描いた長編小説。
内容説明
鳥取藩士・深尾角馬は短躯に生まれたゆえの反骨心から、剣の道に邁進する。しかし、不貞をはたらいた二人の妻を無残に斬り捨てる。やがて一人娘の縁談がこじれたことを恨み…。壮絶な角馬の生涯を妻・かのと、娘・ふきを通して描き切った長編時代小説。
著者等紹介
宇江佐真理[ウエザマリ]
1949年北海道生まれ。作家。95年に「幻の声」でオール讀物新人賞を受賞しデビュー。2000年に『深川恋物語』で吉川英治文学新人賞、01年に『余寒の雪』で中山義秀文学賞を受賞。15年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kei302
55
深尾角馬の生き方に呆れ果てた。朴念仁野郎です。宇江佐さんの剣豪もの。鳥取藩に実在した人物だけど、宇江佐さんによると、文芸誌連載当初から地元の反応は無し。鳥取の名士認定されていないのも頷ける。「深尾くれない」は深尾角馬が栽培している牡丹の通称。血の色を彷彿させる赤い花。半額セールで購入。 2021/12/15
Kotaro Nagai
9
本作品は平成14年2月~11月「小説新潮」に連載され翌平成15年に刊行された長編。徳川家綱の時代、鳥取藩に実在した藩士で雖井蛙流剣法の創始者の深尾角馬が事件を起こし切腹するまでを二部構成で描く。江戸時代初期を生きた硬派の武士を扱った辛口で骨太な作品で紛れもない傑作。実際に残された歴史資料でのほんの僅かが記述からここまでの長編に仕上げる著者の力量は並々ならぬものと感じる。物語は第一部は後妻となる妻かの、第二部はかのの娘ふきを視点から武士深尾角馬を描いてゆく。周五郎や藤沢作品の傑作に匹敵する名作と思います。2024/06/29
山内正
6
お熊の背中から長い道を見たのが 最初か 何処へ行くところだったのか? 家から見えるあの城で勤めておられる お熊は深尾の女中として今もふきの側にいる 今も母の墓参りには父は行かない あれは牡丹が嫌いでと父が言う お母様は変わりもんだわあんな綺麗な花を お母様はお父様に斬られたんか? お嬢様拵えはなししただけですけ お熊が言う うちお父様に聞くけ 不義密通で妻を斬ったのは九年になる 娘ふきはいつ知る事に?2021/07/21
あいちょ。
5
図書館。 実在した深尾角馬について。 2024/05/03
fukufuku
4
鳥取藩士で、剣法の流派を興した深尾角馬という人物。前半は後妻、後半は娘の視点で語られる。宇江佐さんは時代物、市井の人を描く作家だと思っているので、剣術家の角馬とは相性がいいとは思えない。また、あまりにも角馬をがちがちの堅物に描きすぎていて、そこにもってきて”女は鍋釜と一緒だから娘が生まれたらなべとでも名付けろ”とか、それでいて、これだけお勤めに邁進する自分に妻が不満だとは露程も思っていないらしいのがなんだかな。あんまり好きになれないで読み終わってしまった。2024/05/25