出版社内容情報
【文学/日本文学小説】刻々と変貎する《東京》を舞台にした戯曲「エピタフ東京」を書きあぐねている筆者Kは、吸血鬼だと名乗る吉屋と出会う。彼は「東京の秘密を探るためのポイントは、死者です」と囁きかけるのだが……。スピンオフ小説「悪い春」を特別収録。
恩田陸[オンダリク]
著・文・その他
内容説明
東日本大震災を経て、刻々と変貌していく“東京”を舞台にした戯曲『エピタフ東京』を書きあぐねている“筆者K”は、吸血鬼だと名乗る吉屋と出会う。彼は「東京の秘密を探るためのポイントは、死者です」と囁きかけるのだが…。スピンオフ小説「悪い春」を特別収録。
著者等紹介
恩田陸[オンダリク]
1964年宮城県生まれ。早稲田大学卒。92年、日本ファンタジーノベル大賞の最終候補となった『六番目の小夜子』でデビュー。2005年『夜のピクニック』で吉川英治文学新人賞と本屋大賞をダブル受賞。06年『ユージニア』で日本推理作家協会賞、07年『中庭の出来事』で山本周五郎賞を受賞。17年『蜜蜂と遠雷』で直木賞と本屋大賞をダブル受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さてさて
160
東京を舞台にした戯曲を書いている主人公(まあ恩田さんのことでしょう…)が、その舞台となる東京の街をさまざまな角度から切り取って、東京という街の実像に迫っていく過程を書き記したこの作品。東京のあんなこと、こんなことと、そのとても興味深い内容に、少し物知りになったような読後が待つこの作品。そんな中に『筆者はここ数年、資料として大量のピアノ曲を聴いているのだが…』という一文に「蜜蜂と遠雷」が出来上がる前夜のトキメキを感じさせてくれたこの作品。とらえどころのないその全容に逆に恩田さんらしさを強く感じた作品でした。2021/12/21
佐島楓
80
不思議な作品である。東京が無数の死者たちの上に成っているという前提で進められる、エッセイとフィクション、戯曲までもが混然となった小説。東京の特異性は、ほかの都市や東日本大震災を契機に思い起こされる土地からも示され、日本の特異性へと広がっていく。最後の二、三章の連なりは、突飛なようでいてこの着地点を狙っていたのか、と納得。悪夢は、現在進行形でつづくのだ。2018/04/25
R
54
現代を舞台にしたSF小説でした。吸血鬼だと名乗る男、実際にそうであろうと思わされつつ、そのことの不思議ではなく、彼の語る不死性から生きる意味や、生きたあかし、歴史の連なりなんかに思考がとんでいくという物語。とりたてて、何か事件がという話でもなく、人生の意味みたいな、深淵だけども、意味がない思考とも呼べるそれをつなげていくのを楽しめる。何がととらえにくい物語だけど、不思議と読めて、読んだと感触を覚えた読書でした。2018/10/06
里愛乍
45
リアル東京を背景に、でもやっぱりフィクションで、それでもあるある風景が描かれた日常で、ならエッセイ風小説かと思いきや間に挟まれた戯曲や視点の違う物語…ここに挙げられている映画やドラマ、小説はほとんどが自分の好きなものだったり興味をそそるようなものばかりで嬉しかったり、一方では吉本新喜劇の面白さがわからないとは、と嘆いてみたり。作品自体が面白い構成で、軽く短編を読むノリで進めつつも全体の深さを楽しめるような奥行きを感じました。2018/04/24
はるき
35
恩田さんの創作の引き出しをチラッと覗いた気分。書きたいものをツラツラと並べたみたいな感じでした。素敵ステキ。2018/04/18