内容説明
「羽州街道」では、家康に挑戦した上杉景勝、参謀の直江兼続ゆかりの米沢などを歩く。筆者は上杉景勝について、「謙信や直江兼続の華やかさよりも好きであるかもしれない」と書いている。「佐渡のみち」では、江戸初期の佐渡でおきた「小比叡事件」の主人公、辻藤左衛門が登場する。歴史的にはそれほど有名ではないが、いじめぬかれ、最期は名誉を賭けて戦った男への深い同情を感じさせる。
目次
羽州街道(山寺;紅花;芋煮汁;うこぎ垣;景勝のことなど ほか)
佐渡のみち(王朝人と佐渡;大佐渡・小佐渡;あつくしの神;真野の海へ;倉谷の大わらじ ほか)
著者等紹介
司馬遼太郎[シバリョウタロウ]
1923年、大阪府生まれ。大阪外事専門学校(現・大阪大学外国語学部)蒙古科卒業。60年、『梟の城』で直木賞受賞。75年、芸術院恩賜賞受賞。93年、文化勲章受章。96年、死去。主な作品に『国盗り物語』(菊池寛賞)、『世に棲む日日』(吉川英治文学賞)、『ひとびとの跫音』(読売文学賞)、『韃靼疾風録』(大佛次郎賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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chantal(シャンタール)
82
羽州街道、二度ほど訪れた最上川の滔々とした流れを思い出す。山形と言えば上杉家、江戸幕府の執拗な意地悪であちこちに引っ越しさせられ、その度に石高を減らされ、大変だったであろう。大河ドラマの主役にもなった直江兼続がどんな人物だったか、初めて知る。彼よりも主人の上杉景勝に興味を惹かれる。佐渡、対馬暖流のおかげで温暖な土地柄と言う事実に驚く。金山、流人の島、佐渡奉行、ここにも多くの歴史を彩る人々がいた。金山に送られた無実の無宿人の人夫たちの悲しい運命に思いを馳せ、本を閉じる時の後味は少し苦い。2019/02/28
kawa
51
羽州街道と佐渡の道。前者は山寺、米沢、最上川、山形など。既に訪ねているところだが、本書をお供にの再訪も良いだろう。後者は、有能ゆえ抜擢された役人・辻藤左衛門に対する同僚からの嫉み・いじめの果ての非業の死(「小比叡(こびえ)騒動」が小説にしてほしいような興味深い事件。ゆかりの地である蓮華峰寺には是非訪ねたい。「胡蝶の夢」に登場する佐渡島・真野町出身の異才・司馬 凌海に関する記述があまり無いのはちょっと肩透かし。2020/03/21
Book & Travel
50
羽州街道は立石寺から米沢、最上川、山形を巡る。東北には詳しくないが、旅情をそそられる土地だ。米沢は何といっても直江兼続。切れ者の兼続と、鋭くはないが懐の深そうな主・上杉景勝との信頼関係が印象深く、数年前の大河を思い出す。関ヶ原後の藩の窮状と徳川の感情を慮り、自分の死後絶家とした兼続の心情はどうだったのだろう。佐渡のみちでは、江戸期の小比叡騒動とその根底にある官僚組織の意地悪さ、それと江戸期の闇といえる無宿人狩りの悲惨さが心に残る。その一方で幕府瓦解とともに自害した川路聖謨の清廉さにも鮮やかな印象が残った。2020/02/07
さきん
32
米沢と佐渡島という組み合わせ。佐渡島はもっと流された貴族や能などの京都文化について触れてほしかった。米沢は上杉が入ってくる前の中世あたりがもっと深掘りされていたらうれしかった。大佐渡、小佐渡という見方や異民族漂流事件の顛末は知らなかったから面白かった。2018/07/01
kawa
30
(再読)近々、佐渡に行く予定で再読。以下は覚書。 江戸初期、平和が到来し浪人が世間にあふれる時代、佐渡の金山が最盛期を迎える。往時の相川は、江戸、大阪、京都、長崎に次ぐ規模の都市で、町が尾根に馬の背沿いに所在していて、他の町とは谷を隔てていた。鉱山を担う労働者は、江戸等から集められた無宿人(戸籍のない人)で、労働の過酷さから3年前後で病死した。一種の奴隷制だと言えるが、小木港に上陸した無宿人は鳥かごのような籠に入れられて小木街道(無宿人街道)を相川に向かう。(コメントへ)2021/10/16