内容説明
江戸期における日本とオランダの関係性を丹念に追った「オランダの刺激」や、倫理面から日本仏教を鋭く読み説いた「日本仏教に欠けていた愛」、手探りで文章日本語を構築した明治の文豪への思いを語った「漱石の悲しみ」など、講演18本を収録したシリーズ第4巻。
目次
一九八八年(2)(日本の言語教育;大隈重信が目指した文明 ほか)
一九八九年(オランダの刺激;「砂鉄のみち」と好奇心 ほか)
一九九〇年(義務について;新島襄とザヴィエル ほか)
一九九一年(秦氏の土木技術;踏み出しますか ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
レアル
58
其々の講演で様々な話をされているのだが、何となく幕末の空気が強かったこの4巻。勉学に励む長州。勉強はなるべくさせない雰囲気の薩摩。頭でっかちの長州。先を見る目というモノをどこよりも凄かった薩摩と。。話す視点は違うが、その後の時代の予感を感じさせるそんな講演が多かった。しかし一番面白かったのは「砂鉄のみち」かなぁ。。「鉄」というと素早く反応する自分も滑稽だが「鉄の歴史」は興味深い!2015/08/28
aponchan
16
司馬遼太郎氏作品乱読のうちの一冊。時間はかかったがその分、内容も濃いように感じた。氏の過去に読了した作品を思い出しながら、背景などの理解を深められたと思う。2021/11/28
i-miya
13
★司馬遼太郎『司馬遼太郎全講演(4)』(朝日文庫)2007.07.16- 田部長右衛門家 山林大地主 イギリス、鉄鉱石 産業革命 コークス革命 P097 出雲、安来市、「和鋼博物館」 慶州あたりの良質の砂鉄と出雲の砂鉄は類似 タタラ吹きの技術 ムラゲ(村下) 技術者が大切 P107 ○ 大口市 山脇東洋 五臓六腑 京都、粟田口の刑場 ○ 萩 杉道助 山口 タクシー運転手さんからの話 2004/01/12
まさにい
8
講演の内容はどれも良かったのだが、その内ロンドン大学での『義務について』東北大学医学部同窓会総会での『心とからだ』朝日カルチャーセンターでの『漱石と悲しみ』が印象に残る。特に『義務について』は外国で行われた講演であったせいか、日本を擁護しているのが面白い。司馬さん、いつもは日本に辛口であったけれども、やはり好きなんだなぁ、と思う。日本の明治維新後を外国では「猿まね」と言っていたが(最近は聞かないが、外国ではこのように言われていると言われていた記憶があった)世界に類を見ない、偉大な猿まねであると言っている。2018/02/09
まさにい
5
再読。今回は東京・有楽町マリオン朝日ホールで行われた『踏み出しますか』に注目した。司馬さんと井上靖さんとの対談で、井上さんが『日本も組合に入らなっければいけませんね』といっていたそうである。その後の記述で、司馬さんは、日本には世界の基準を日本がになうことは文明を享受し続けていた日本には重荷になるだろう(無理)と言っている。確かにそう思うが、自由と人権が世界の共通認識となりつつある今日と日本人の人の好さを加味すると、日本人個々人が自律的に世界の組合員となるような社会になれば、可能かもしれないとふと思った。2022/07/05