出版社内容情報
【文学/日本文学評論随筆その他】強制収容所の体験の記録『夜と霧』をはじめ、精神科医フランクルの著作が、日本中で静かに読み継がれている。苦しみを抱えながらフランクルの言葉を生きる支えにする人々と、フランクル自身の人生をたどり、その思想の深奥を追う。《解説・後藤正治》
河原理子[カワハラミチコ]
内容説明
強制収容所体験の記録『夜と霧』をはじめ、精神科医フランクルの著作が、日本中で静かに読み継がれている。越えがたい苦しみを抱えながら、フランクルの言葉を生きる支えとする人々と、彼の人生をたどり、「それでも人生にイエスと言う」思想の深奥を追う。
目次
序章 生きる意味
第1章 『夜と霧』を抱きしめて
第2章 フランクルの灯―読み継ぐ人たち
第3章 強制収容所でほんとうに体験したこと
第4章 ヴィクトールとエリー
第5章 本がよみがえるとき
終章 あたかも二度目を生きるように
著者等紹介
河原理子[カワハラミチコ]
1961年生まれ。東京大学文学部社会心理学科卒業。朝日新聞記者。社会部が長く、性暴力被害の取材をきっかけに、さまざまな事件事故の被害者の話を聴くようになる。編集委員、雑誌『AERA』副編集長、文化部次長、甲府総局長などをつとめる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
99trough99
28
7月に、本書の著者、河原理子さんのご講演を拝聴できる機会に恵まれたので、その前に是非と、新版「夜と霧」に続き本書を手に取った。自分は、フランクルの著書は「夜と霧」しか知らなかったが、本書を読んで、次は絶対「死と愛」を読みたくなった。霜山先生の奥様から提供を受けたという、1954年、アントン・カラスの店でフランクルと語らう若き霜山先生のお写真拝見し万感の思いに。自分も列席させて頂いた2009年10月、聖イグナチオ教会での霜山先生の告別式の風景は、学生時代の霜山先生への感謝を改めて思い出させてくれた。2023/06/11
金吾
27
思ったものと異なりましたが、幅広い内容であり読んで良かったです。特に第2章は生きていくことを考えさせられるものであり、この部分だけでももう一度読みたくなりました。2022/12/14
翔(かける)
18
本書のおかげで、『夜と霧』はホロコーストの告発本じゃないと知りました。人間はどんな過酷な運命にさらされても、運命に対する態度を決めることができる、人間の生き方を問うた本だったのですね。私が『夜と霧』を読んだのは中学生の時。写真と文章から伝わる想像を絶する様子が衝撃でした。それ以来ホロコーストは、私の心の一定の割合を占めています。p.81のフランクルの言葉は、涙が出ました。もう一回『夜と霧』を読み返そう。フランクルが魂から書いた本を読むことが、今の私には必要だと感じました。2021/04/23
seeds
16
夜と霧はなぜ多くの人によみつがれているかというとナチスがしたことの告発本ではないからだそうです。被収容者として家族を奪われたものとして憎しみや怒りがこもっていても不思議ではないのだけど、それがないのです。ただただ冷静に体験談を述べ、そこからヒトを観察、分析し、考え(どんなときも、どんなひとにも生きる意味があってほかのだれでもないあなたを待っている人や務めがあるのだ)を伝えているからです。生きる意味を見失いかけた人にきっとなにかしら気付きを与えてくれる名著。忘れないでおきたい一冊になりそうです。 2019/06/10
Roti
14
朝日新聞社の記者がV・E・フランクルの「夜と霧」を中心とした書籍とその人生をたどり、フランクルに影響を受けた翻訳者等の人々のこととともに綴る。人生に意味を求めるのではなく、「人生の問いにあなたは答えなければいけない」生き方の選択。それだけで人は生きていくのだ。息子を喪ってなお、重く響く言葉に光明を得て、人生の道標を知る。親衛隊の中にも良い人がいて、被収容者の中にも悪い人はいたという。そのためフランクルは他のホロコーストの対象となった人から敵視されていたという。それでも人生にイエスと言う。2017/10/29