内容説明
二重被爆―広島と長崎で原子爆弾を二度被爆した93歳の著者が、重い口を開き語る自らの半生。運命に弄ばれたかのような二度の被爆と、原爆症と闘いながら家族を守り、必死で生き抜くことのみを考えた戦後。最愛の息子を突然の原爆症で失った今、封印してきた「あの戦争」への思いを語る。
目次
序章 運命
第1章 彊めて息まず
第2章 孤立の道へ
第3章 銃後の暮らし
第4章 二重被爆
第5章 反戦への誓い
著者等紹介
山口彊[ヤマグチツトム]
1916年長崎県生まれ。旧制中学卒業後、長崎三菱造船株式会社に入社。製図工として勤務する。出張先の広島と帰郷した長崎で相次いで被爆。終戦後、解雇され、長崎に駐留していたアメリカ海兵隊に通訳として従事する。その後、中学の英語教員として7年間の勤務のあと、三菱造船へ復職。定年までタンカーの設計を担当した。2006年8月、90歳で出演したドキュメンタリー映画『二重被爆』がニューヨークの国連本部で上映され、現地で反核のスピーチを行った。また、十代から短歌をはじめ、1999年、第37回原爆忌文芸大会で長崎県知事賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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青葉麒麟
6
幼少の頃に母親の自殺の第一発見者に為って終う壮絶な体験をし、二回も被爆して終い其れでも尚、後ろ向きに為らず前に向かって進んで行こうとする姿勢が凄いの一言。全部の言葉に重みが有る。2012/04/21
うき。
5
恥をさらけ出すようですが、二度の被爆を経験した方がいらっしゃるということを、想像してみたこともなかった。二次被爆と二重被爆はまったく別のことなのですよ!本としては、被爆以前のことに少々ページを割き過ぎという気はしますが、8月以降戦後に至るまでの淡々としつつも強い言葉をわたしたちは読むべき。2度の被爆が明らかであるにも関わらず、被爆証明から2度目の被爆の事実の記載が途中から消された…悪意を持ってではなく、消してもいいと思われたということが信じられない。まったくもうお役所というものは!2009/08/15
杏子
4
私もごく最近まで、二重被爆をされた方がいるということを全く知らなかった。勤務先の中学校に選ぶ本を見ていく過程で知ったようなものだ。この本も実際、中学校用に購入し、今私が読めたのは息子が夏休み用の読書の本として借りてきたからだ。どんな悲惨な光景が…と思いきや意外にも著者の半生を語りかける、穏やかで訥々とした文章に迎えられた。それだけに、著者の人生をえぐった原爆の恐ろしさが身にしみて感じ取れた。本当に、あってはならないものなのだと、著者の淡々とした文章からその思いを読み取った。著者はすでに亡くなっているが、2011/08/30
かりん
4
4:最近話題ですが、「二重被爆」自体がさらりと流されているように感じます。私は2年ほど前に知り、大ショックでした。理路整然とした文章ににじみ出るいろいろ…。■戦争は人間の心の中で起こるものだ。太陽が地上に落ちた。人間が人間でなくなってしまった光景。165人。撫で斬り。戦時標準船。大広島炎え轟きし朝明けて川流れ来る人間筏。うち重なり焼けて死にたる人間の脂滲みし土は乾かず。街なのか、墓場なのか。お母さん、元気ですか。善意の贈り物の交換。2011/01/28
sasha
3
出張先の広島で、帰郷した長崎で。2度の被曝を体験した人はその情景を淡々と描く。それが却って、凄惨さを感じさせる。読み継がれるべき書。2011/03/07