感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
傘緑
44
「『老いぬればかたち醜し』と卑下する先生の感覚と、『わが才の澄みとほり、わが詞の匂はしき』と揚言する先生の自信との交錯の中で、あの悲劇が生れたのだ」年下の同性への性的嗜好をはじめとして女性への生理的嫌悪、コカイン中毒などの様々な奇癖が伝わっている折口信夫。その晩年の一時期を共に過ごし、そして袂を別った弟子の加藤守雄の回想。折口のまるで幽鬼や餓鬼のような惨烈なる老醜。死霊が如き凄まじき妄執。「私を先生から離れがたくするものは、何なのだろう…人間的魅力と言っても当たらない。もっと、苛烈で呪縛的な感染力なのだ」2017/07/12
うえ
9
随分昔に読んだ折口論。最初に読んだのがこの本だったので長いこと折口が食わず嫌いであった。とはいえ著者の文章力は見事なものであり学究の世界に残っていたらと惜しまれる。ただ今読むと折口の「ぼくの大事にしている弟子を、みんな取ってしまわれる」という言葉もわかる。慶応で柳田の講義を聴き、柳田門下になった学者が結構いるわけで。とはいえウィキペディアで柳田門下、と記されていても著書では柳田をディスり折口を尊敬している人もいるので、やはり自らの眼で確かめることが重要。著者は角川で「短歌創刊号 釈迢空追悼号」を出して辞任2018/02/03
euthanasia
4
そこんじょそこらのサイコ・サスペンスよりよっぽどスリリング。ようは師匠に尻を狙われた男弟子が逃避行しながらも次第にじりじりと追い詰められていくだけの話なのだが、鴨のローストに巻きつけた油でギトギトになった手紙や鴨居に垂らした黒い絹の切れなど細部の端々から折口信夫の狂気がひりひりと伝わってきて、このエッセイを一級の心理スリラーに成り立たせしめている2012/10/23
通い猫
2
折口信夫の作品を読んだことがあるのかどうなのかぼんやりしているので門弟である加藤守雄の視点だけで折口信夫像を見てしまうのもどうなんだろうかと言うことで、巻末にある岡野弘彦のエッセイ、加藤守雄年譜とあわせて読むと多少は違う角度から読み取れる…?迫りっぷりが凄まじくゾワゾワするけど、他の門弟はこれが師弟というものだと理解していたのかどうなのか。養子ねぇ…師弟が親子になると言うより別の意味の方が強そう…ええ、藤井春洋が気になります!2014/12/15
猫森
2
何度も読み返したい本の一つ。特に加藤さんのことを読んだ歌とか、加藤さんに食品を贈ったときのエピソードとか真夜中歩き通して(後略)。 でも何度読んでも「先生ッ! それはおかしいです!!」と突っ込まずにいられない。