内容説明
ミヒャエル・エンデの傑作『モモ』―。人の心を読みとる不思議な力をもった女の子・モモが周囲の人たちに影響を与えてつくる新鮮な世界、そして、“時間どろぼう”と対決して撃退する痛快な物語。世界30数ヵ国に訳されたベストセラーを、シュタイナー教育を底流に見ながら、興味深く解説する。
目次
序章 『モモ』の水面下へ
第1章 人の話を聞く力―新しい聴覚をひらく
第2章 一日の回顧―自己を他者として観察する
第3章 身体・魂・精神―人間の三重性、そして転生
第4章 好奇心と関心―嵐の海の冒険
第5章 魂の領域の登場人物―ベッポとジジと友人たち
第6章 私のなかの灰色の男―テクノロジーの秘密の仕事
第7章 「時間とはいのちなのです」―量で測れない世界
第8章 本質を見抜く力―事実そのものに語らせる
第9章 「ほかの力」の助け―やってきた使者、カシオペイア
第10章 時空の境界線を越える―マイスター・ホラとは何者か
第11章 いのちを送るみなもと―時間を逆にたどる
第12章 「時間の花」―見える音楽、宇宙の言葉
第13章 帰ってきた世界で―認識が力となる
第14章 モラーリッシュ・ファンタジー―直観と決断
第15章 意識の変革―愛し、信じ、希望しつつ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェルナーの日記
111
本書を深読みするには2つの条件がある。先ずは当然、『モモ』を読んでいること。次に”ルドルフ・シュタイナー”の『人智論』について予備知識があることだ。とくにシュタイナーの『いかにして超感覚的世界の認識を獲得するか』(ちくま学芸文庫)と『人智学・心智学・霊智学』(ちくま学芸文庫)の2点は把握しておきたい。でなければ本書を読んでも内容の半分も理解できないであろう。彼の提唱する”人智学運動”は、当時の世の中に対して、況や現在でも他に類のないユニーク内容だからである。その淵源を辿れば実践派カバラ神秘思想に行き着く。2016/08/14
ともとも
31
意図がそこにあるのかもというのは解るのですが、 ミヒャエル・エンデ、「モモ」「はてしない物語」というかシュタイナーの教育論が 強すぎる、濃すぎる感じつつも、そんな哲学チックさが、難解さを感じながらも、 なるほどこういった意図があるのか?なんて納得させられることもあり。 それだけに、人間をよく観察して、性格に描かれているのかもしれないと しみじみ思わされてしまいました。 「モモ」「はてしない物語」だけでなく、ミヒャエル・エンデの世界観、魅力が 詰まった1冊で良かったです。 2016/03/10
iwri
10
再読。著者の子安美知子氏は日本のシュタイナー研究の第一人者であり、エンデの友人でもある。エンデとシュタイナーという観点を取り扱うのにこれほど適した人は日本には他にいないだろう。しかし、何よりも素晴らしいのはその知識ではない。本書で直接参照されている本は、シュタイナーの基本書であり邦訳もある。表面的にならば、ここで語られていることの多くは誰でも連想が働くだろう。子安さんならではと思えるのは、アントロポゾフィーが隅々まで浸透したような見方、語り方だと感じるし、そこにこそ本書の素晴らしさがあると思う。2011/10/10
くりこあん
6
エンデ、シュタイナーのガイドブックとしてとっつき易く、本編と同じ位面白い。 「時間はいのちなのだ。 モモはたんに世の中のストレスや慌ただしさを警告しているのではない。 人間から時間が疎外されていくのはいのちが疎外されるという事であり、そう仕向けて行く恐ろしい力が世界にある。 その一方で人間に治癒の作用を送って来る別の力も働いている。 人間は人間だけで全てを行う訳ではなく、条件を整えたり助けてくれたりするほかの力が働いている。 だか決断するのは本人であり、外からの世間的なものさしに縛られず、2011/02/20
みやか
5
10時08分読了。死は突然に訪れるものではなく日々わたしたちのいのちと置換されている。その置換が完了した日に肉体的な死を迎える。エンデ全集などでエンデ氏がシュタイナーの思想に親しんでおられることは多々読んだけれど、その思想に触れたのはこのほんが初めてである。『モモ』をより味わえる案内書でありシュタイナーの考え方についてのやさしい入門書にもなった。「生活」と翻訳されている語(Leben)がドイツ語では「いのち」という意味も持つ、と翻訳にたずさわるかたが教えてくださるのはうれしい。「時間とはいのちなのです」。2010/04/14