内容説明
東は太平洋をこえて南米まで、西は箕氏朝鮮を通じて周王朝へ―。かつて日本列島には、想像を絶する壮大な行動半径と文化を有する縄文人たちがいた。『記・紀』による神話、『三国遺事』『三国志』などの丹念な解読から、天皇家に先立ち、また並存した文明圏の存在を検証し、“卑弥呼”の謎に迫る。
目次
第1部 日本古代史の夜明け(日本人の始源;日本人はどこへ行ったか)
第2部 日本神話の多元性(国生み神話の謎;天国の所在;国ゆずり神話;「アマテル大神」の原型性;弥生新作神話の誕生;日本列島各地の神話)
第3部 隣国の証言(『三国史記』;『三国遺事』)
第4部 金石文の証言(志賀島の金印;室見川の銘版)
第5部 倭人伝との対面(倭国前史;里程論;首都・宮室論;物証論;卑弥呼論)
第6部 倭国の鳥瞰図―その諸問題(社会構成;倭国の暦)
感想・レビュー
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遊動する旧石器人
2
1988年4月20日第1刷発行(1991年7月5日第5刷)。1984年11月に朝日新聞社から刊行された単行本の文庫本。越に倭族がいたという説ではなく、その節とは切り離し、列島の倭人が周王朝に献上品をもたらしていたということを事実と認めることから始まり、倭の神話は越→出雲→筑紫→ヤマトという過程で形成されていることを指摘する。天国を対馬海流圏にあて、そこから九州王朝が成立してくることになる。倭人伝の読み方から邪馬の壹国と解き、伊都国より百里の不弥国を早良にあて、そこを玄関とした博多湾岸を王都と考える。2019/03/20
海辻
1
古墳時代(近畿大和朝廷)→弥生後期(筑紫邪馬台国)→弥生前期(出雲王朝)→縄文時代(越後越前能登エリアの越の国)まで遡っての政権交代仮定には絶句。対馬海流を制していた海(あま)人が本拠としていた対馬を天国(あまつくに)とし、そこからの天孫降臨など筆者らしい考察。卑弥呼の読みを“ひみか”とし本来の文字に“日甕(ひみか)”を充て、筑紫国風土記に記載されている“筑紫の君らの祖たる甕依姫”との一致を示唆されて唖然。色々と面白いです。2010/02/21