内容説明
本土と北海道とを結ぶ海上の道として、80年にわたって人びとに親しまれてきた青函連絡船は、1988年3月13日の運航を最後に、津軽海峡から姿を消す。本書は連絡船通信士として35年間勤務した筆者が、惜別の思いをこめて綴った海と船との記録。とくに海難史上まれにみる、台風による洞爺丸転覆事故の記述は、鎮魂の筆致で読むものの胸をうつ。
目次
第1章 津軽海峡
第2章 青函航路
第3章 国鉄連絡船
第4章 空襲
第5章 再出発
第6章 洞爺丸台風
第7章 僚船の命運
第8章 海難審判
第9章 船乗り
第10章 余話
第11章 盛衰
終章 連絡船の灯
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ナツ
2
中々読み応えのある一冊でした。実際に乗務員として乗っていた方が書いているので緊迫感も伝わってきます。青函連絡船の遭難時の事も壮絶な感じがよくわかった2021/12/23
churu
1
津軽海峡と連絡船の歴史から始まるこの本は、凡百のガイド本が逆立ちしても及ばない格調高い名文で綴られる。 とりわけ著者が通信士として勤務していた当日の洞爺丸台風の模様を描いた迫真の筆致は極めて重要な現場の記録であり、初読時16歳だった自分は、羊蹄丸の甲板から函館港の凪いだ夜の海を眺めながら、この本の鮮烈な描写を思い出して、戦慄に眠れなくなったことを今も鮮烈に思い出す。 もちろん今読んでも…何度読んでも巻を措くことができなくなる。 いつまでも後世に伝え残すべき名作。日本のノンフィクションの最高峰だと思う。