内容説明
「普通の人がどう考えて生きているのかをつかまえない政治分析は、狭く、痩せてしまう」と考える、現代日本有数の国際政治学者は、映画を論じることによって、アメリカ社会・アメリカ政治の実態に迫ろうとする。たしかに、「映画を手がかりとして、『政治家の世界』よりも視野を広げ、その社会の共通了解と時代精神の変容を理解する」のは、「アメリカのように映画の持つ意味が際だって大きい社会を考えるときには有効な方法だろう」ことは間違いない。題材としてとりあげるのは、『國民の創生』から『ミリオンダラー・ベイビー』まで、古今のアメリカ映画。社会科学者として、そして大の映画好きとして、自在に映画作品を語る著者は、アメリカ社会の過去と現在をわかりやすく提示する。
目次
兵士の帰還
大統領の陰謀
東部と西部
市民宗教の暴走
理想主義の戦争
高貴な日本人
観客の逆説
隣の殺し屋
失われた未来
悪女の系譜
人種のサラダ・ボウル
マスコミぎらい
魔法の王国
忘れられた戦争
アメリカの影
著者等紹介
藤原帰一[フジワラキイチ]
1956年生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程単位取得中退。エール大学大学院、東大社会科学研究所助手、千葉大学助教授を経て、99年から東大大学院法学政治学研究科教授。専攻は国際政治、東南アジア政治(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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白義
11
大の映画好きの国際政治学者、藤原帰一による映画を通したアメリカ社会入門。タクシードライバーのような帰還兵とトラウマや、殺し屋ものと市民の不安など代表的なテーマを分かりやすく正確に扱っている素晴らしいできばえ。これ一冊で見たい映画がかなり増えた。国民の創生がKKKの第二の隆盛期をもたらしたことや、ベトナム戦争ものではもはや善意のアメリカ兵があまり描かれなくなったことなど、興味深い指摘がたくさんある。純粋に映画評論としても愛情が溢れていて秀逸な出来の一冊2012/10/26
swshght
8
藤原帰一は映画好きの政治学者だ。個人的には、映画の専門家以外でもっとも信頼できる「映画を語れる人」だ。本書の目的は「映画を通して、アメリカ社会とアメリカの政治を考えること」。映画は長らく監督のものとして語られてきた。しかし、あらゆる映画作品が観客や社会の存在を前提としていることを見落としてはならない。観客や社会の要請が映画のなかに無意識に表象されることも十分に考えられる。映画は社会的存在でもあるわけだ。映画は作品と現象の両面からアプローチされなければならない。映画と社会の関係性が丁寧に語られている一冊だ。2012/10/08
ともりん
2
これ読んだ後だから、スターウォーズを観ることにする! すごく語り口に映画愛と藤原先生ならではの視点が満載で、5年ごと位にシリーズで出してほしいなぁ。2015/12/26
Nobuyoshi
0
孤島に一つ持って行くならけれ、という傑作は『深夜の告白』(ビリー・ワイルダ監督)という映画らしい。私はまだ見てないが、楽天ShowTimeで見放題(2,149円)に加入すると見られる。2017/04/07
michi
0
★★★★2013/07/27
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- 和書
- 農園はジャングルだ