内容説明
’20年代。落日のオーストリアを舞台に、運命のままに変転する一人の女の恋。シュテファン・ツヴァイク幻の遺作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Yuichiro Komiya
10
小さな郵便局に勤めて日々をつましくすごしていたクリスティーナは、ある時金持ちの伯母に呼ばれ、社交界に出る。そこで素晴らしく充実した時間を過ごして、人生を取り戻した気になっていたが…伯母の所にいたクリスティーナがとても魅力的だったのは、立派なドレスや靴があったからなのだろうか?お金がなくとも自分に自信が持てればもっと幸せに暮らせるのではとも思ったが、何かをやるための機会さえ持てないほど困窮した生活では、そんな事は言えないのかもしれない。2017/01/21
ringoringo
5
クリスティーナが貧しい中に暮らしていても、裕福な生活を知らなければ、それなりに幸せに暮らしていたかもしれないし、フェルディナントのような男に惹かれたりもしなかったかもしれない。あまりにも深い絶望の中に生きていたら、目の前にあるお金を自分のものにして、少しでも生きているうちに、自分の願うような生活を手に入れたい気持ちも分かる。それにしても、あまりにもやりきれない話だ。。。2015/02/20
ますん
1
病身の母の世話をしながら働きづめの貧しい生活に沈んでいた主人公が、裕福な伯母の思いつきで、美しい令嬢に変身し、外国の豪華ホテルで人生初めての休暇を過ごします。同じこの世に信じられないほど華やかな天上世界があることを知ったがために、強引に夢から覚めさせられた彼女は、戦争によって青春時代を奪われた自分の人生と世の中を憎悪します。作者の遺作で未完のようなこの作品の続きは、作者自身のその後の人生によって完結されるのでした。ツヴァイクは本当に面白くて読ませます。現在あまり読まれていないのが残念。2014/05/05