出版社内容情報
さまざまな国の人が集まる大阪・ミナミ。日本屈指の繁華街に、移民の子どもを支える市民団体「Minamiこども教室」がある。著者は記者としての取材を兼ね、ボランティアを続けてきた。「移民のルーツをもつ子どもたち」と接するなかで見えてきた「共生」の本質を、多数のエピソードから描く。
内容説明
誰が日本人か、誰が外国人か―。その問いに簡単な答えはないこと、そう問うこと自体に線引きの暴力が潜むことを、教室の子どもたちは私に教えてくれた。
目次
第1章 大阪ミナミの教室で
第2章 教室につながる子どもたち・親たち
第3章 教室を形づくる大人たち
第4章 ロンドンの教室で
第5章 コロナ禍という「危機」に
第6章 「支援教室」という場所
著者等紹介
玉置太郎[タマキタロウ]
1983年、大阪生まれ。2006年に朝日新聞の記者になり、島根、京都での勤務を経て、11年から大阪社会部に所属。日本で暮らす移民との共生をテーマに、取材を続けてきた。17年から2年間休職し、英国のロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)で移民と公共政策についての修士課程を修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
@nk
43
思えばこれまで、子どもも含め、移民ルーツの人たちの隣に何度も座っていた。彼らのルーツ(Roots:起源)など関係なく付き合うことができていると思っていたのだが、彼らのルーツ(Routes:経路)こそが大切なものであり、理解するまではいかなくとも(そもそも理解しきれるとも思えない)、そこをしっかり知ることができているのか、何度も自問自答した。だからこそ読み終えた感覚を、なかなか言葉にできなかった。/一方で、私の暮らしに直接かかわらない移民ルーツの多くの人たち。そんな彼らの声を耳にしていたとしても、2024/10/21
香菜子(かなこ・Kanako)
22
移民の子どもの隣に座る 大阪・ミナミの「教室」から。玉置 太郎先生の著書。フィリピン、中国、韓国、ブラジル、ペルー、ネパール……さまざまな国の人たちが集まる大阪・ミナミの教室。移民の子どもの隣に座ることではじめて移民の子どものことを理解できる。移民の子どものことを理解しないで移民受け入れの良し悪しを上から目線で尊大に語るなんて厚顔無恥非常識。移民受け入れの良し悪しを考えるなら移民の子どものことを正しく理解するところから。玉置 太郎先生のルポルタージュから学べることがたくさん。2024/05/01
onasu
15
朝日新聞の記者である著者は、大阪ミナミの移民の子どもたちを支援する「Minami子ども教室」を取材に訪れてより10年、ボランティアとして関わってきた。元々移民問題には興味があったそうで、途中で2年間、その勉強のためにロンドンに留学し、同地でも同様の施設でボランティアも。 教室では日本語習得から受験対策まで支援するが、役所への申請など生活支援も欠かせない。タイトルはその全てが、1対1で子どもの隣に座って寄り添うところから。外国人の多い地域の実情と教室に関わる大人たちのことも覗いてこられました。2023/11/15
shikada
14
1週間くらいかけてじっくり読んだ。人口の約3分の1が外国籍の大阪ミナミ・島之内で、移民の子どもの学習支援をする「Minami子ども教室」。日本語に習熟していない移民の子に日本語その他の教科を教え、暮らしの困りごとの相談に乗る。役所の難解な手続きの手助けをしたり、コロナ禍では弁当を配って生活支援したり、単なる教室の域を超えた活動をされていると思った。移民の表層だけでなく、そのルーツになる政策や歴史まで掘り下げていて、見栄がなくとても読みやすい、お手本にしたいような文章だった。2024/02/12
äï
6
同じようなボランティア活動を始めて2〜3年、何度も頷きながら読みました。あれほどの近さ深さで子ども達と関わることはできないけれど、少しでものびのびとできる時間や場所を提供できていたらいいな。そうやって誰かのために何かをできる場所として、すっかり私にとっての居場所になっています。2024/07/09