出版社内容情報
1977年、エストニアに生まれたラウリ・クースク。コンピュータ・プログラミングの稀有な才能があった彼は、ソ連のサイバネティクス研究所で活躍することを目指す。だがソ連は崩壊し……。歴史に翻弄された一人の人物を描き出す、かけがえのない物語。
内容説明
ソ連時代のバルト三国・エストニアに生まれたラウリ・クースク。黎明期のコンピュータ・プログラミングで稀有な才能をみせたラウリは、魂の親友と呼べるロシア人のイヴァンと出会う。だがソ連は崩壊しエストニアは独立、ラウリたちは時代の波に翻弄されていく。彼はいまどこで、どう生きているのか?―ラウリの足取りを追う“わたし”の視点で綴られる、人生のかけがえのなさを描き出す物語。
著者等紹介
宮内悠介[ミヤウチユウスケ]
1979年、東京都生まれ。少年期をニューヨークで過ごす。2012年の単行本デビュー作『盤上の夜』で日本SF大賞、13年『ヨハネスブルグの天使たち』で日本SF大賞特別賞、また同年に(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞、17年『彼女がエスパーだったころ』で吉川英治文学新人賞、『カブールの園』で三島由紀夫賞、18年『あとは野となれ大和撫子』で星雲賞(日本長編部門)、20年『遠い他国でひょんと死ぬるや』で芸術選奨文部科学大臣新人賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
379
宮内 悠介は、新作中心に読んでいる作家です。 著者の新境地でしょうか、エストニアの天才プログラマーの青春大河小説の佳作でした。現在のウクライナ侵攻もそうですが、ソビエト連邦崩壊により様々な悲劇があったんでしょうね。 https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=243522023/09/09
tetsubun1000mg
195
設定が旧ソ蓮の衛星国だったエストニアが舞台。 ITを国の政策として取り組み世界最先端のIT先進国という程度の知識でした。 幼年時から数字に対する異常な興味を持ち、やがてプログラムにハマるようになりゲーム作りが唯一の楽しみとなる少年が仲間を見つける。 しかしソ連からの独立を果たそうとするエストニアと、ソ連出身の少年たちは次第に離れていく。 終盤にラウリを探すジャーナリストの名前を聞いてからが驚き! そこから一気にそれまでの伏線が回収されて、エストニアの成り立ちまでが明らかになる。叙情的な演出が心地よい。2024/02/03
Viola
188
まず何より、主要な登場人物がかなり限定されてるので『カタカナ名マジで覚えられない問題』が発生しないまま読み切れたのがとても良かった。笑 内容も、ラウリを探す『わたし』と当時のラウリと二つの視点で描写されてる意味がきちんとあって、『わたし』の正体がわかったときは感慨もひとしおだった。 橋で願った友情は、きちんと叶ったんだなと。そして、愛や恋でなくとも、友情という結び付きはきちんと尊いものなんだなと。良い本でした。2024/03/12
はやたろう
181
バルト3国の一つエストニアで育ったラウリの物語。フィクションとノンフィクションの間みたいで、事実をたどってるような話。 ソビエト連邦崩壊、その前後に育ったラウリとカーテャ、そしてソビエト出身のイヴァン。小さい頃から、この先もずっと一緒にいようねと誓った3人だったが、社会情勢はそれを許さなかった。物語はそんなラウリを探す、誰か目線の話。2023/12/26
タックン
159
旧ソ連のバルト三国エストニアで数学に興味を持ったとこからプログラミングに才能を出し天才少年と言われたラウリ。 そしてロシアの少年とプログラミングの賞の競い合いモスクワの大学を夢見る。 しかし旧ソ連の崩壊とエストニアの独立という時代の波に飲まれて、夢もかなわずプログラミングも止めてしまった。 ずっと題名が気になってきたけど、3章で探してた人の真相がわかった時に心が温まるいい話でした。 政治の話っぽくて難しいかなって思ったけど、さりげない感じで読みやすかった。 エストニアの自然描写が美しかった。 2024/01/22