出版社内容情報
かつて子役だった沙良は、芸能界で伸び悩んでいた。自分の正体をまったく知らない人間に出会いたい──そんな折に酒場で偶然出会った柏木という男に、たまらない愛しさと憐憫(れんびん)を感じた──。愛に似て、愛とは呼べない関係を描く、直木賞作家の野心作。
内容説明
洪水のように押し寄せるこの切ない感情。息もできないくらいに。そしていつしか、私は彼を手放せなくなっていた―。
著者等紹介
島本理生[シマモトリオ]
1983年東京都生まれ。2001年「シルエット」で第四回群像新人文学賞優秀作を受賞。03年『リトル・バイ・リトル』で第二五回野間文芸新人賞を受賞。15年『Red』で第二一回島清恋愛文学賞を受賞。18年『ファーストラヴ』で第一五九回直木三十五賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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starbro
315
島本 理生は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。 微妙な愛の物語、頁数の割に心にずっしりと来ます。 精神的に不安定な女優とは、付き合いたいような付き合いたくないような・・・ 今年のBEST20候補作です。 https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=238542022/11/20
旅するランナー
259
彼が分かっている、ということを私は分かっている、ということを彼が分かっていること。子役から芸能界で生き、伸び悩みを感じている女優が出会う、自分本来の姿を見透してくれる男性。悟りのような恋、美しき憐憫に心奪われました。2023/03/31
まちゃ
170
島本さんらしい少し歪んだ男女の関係と、その心の機微を描いた物語。「自分の正体を知らない人間に出会いたい」という心情は分からなくもないですが、だからと言って一線を超えられるものでもないですね。それを疑似体験するのが小説という意味で興味深い作品でした。【憐憫】「かわいそうに思うこと」「あわれみの気持ち」「ふびんに思うこと」2022/12/19
モルク
136
10代から女優をしている沙良。若い頃に貯めていたかせぎを母や親戚に根こそぎくいものにされ摂食障害に。その治療も一人でやった。テレビマンの夫と結婚したが孤独は癒されることはない。そんなとき知り合った柏木。謎は多いがわかりあえる気がする。しっくりくる関係。付かず離れずだが彼を求める沙良。でもそんな日々が長く続く筈もない。彼なしでも自分と向き合える、その後の彼女はもう孤独ではない。繊細であり余韻の残るストーリー。2024/01/25
おしゃべりメガネ
136
憐憫(れんびん)とは「かわいそうに思うこと。あわれむこと。あわれみ」。なんとも島本さんらしいタイトルであり、作品だなと。僅か170ページにも満たないボリュームでありながら、相変わらず謎に不安定な女性を書かせたら、天下一品ですね。細々と芸能界に居続ける女優「沙良」は人妻でありながらも、出会い系バーにてミステリアスな男「柏木」と出会う。そこからはある意味、定番ともいえる島本さんワールドが展開されますが、タイトルにあるように'かわいそうに思う'のは果たして誰が誰に対してかは、読み手に委ねられるのかもしれない。2022/11/27
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