出版社内容情報
【文学/日本文学小説】いじめにあっている長男、シメジしか食べなくなってしまった娘、そしてろくに働かない夫。ある日、メル友募集の掲示板に書き込みをしたことで、35歳の主婦・たまきの人生は転がりはじめる……直木賞作家が掬いあげるように描く、不穏で明るい家族の姿。
内容説明
どうしたら夫と結婚せずにすんだのだろう。「思い切ったこと」がしたくなったある夜、ネットの掲示板に書き込んだことで、たまきの日々は「何かが決定的に」変わりはじめる―直木賞作家が掬いとる、あかるく不穏な恋愛小説。
著者等紹介
井上荒野[イノウエアレノ]
1961年東京生まれ。成蹊大学文学部卒。89年「わたしのヌレエフ」でフェミナ賞、2004年『潤一』で島清恋愛文学賞、08年『切羽へ』で直木賞、11年『そこへ行くな』で中央公論文芸賞を受賞。父は井上光晴(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
めろんラブ
110
いい人たちのいい話、ほっこり大好き!絶対泣けます!という部類がお好みならば、本作には近寄らない方がいい。愛?笑わせんなよとばかりに、足場を失った男と女が奈落へ落ちる様には、ありがちな希望も救いもない。なにより薄ら寒い気持ちになるのは、本作の描く虚無が日常の延長線上にあるということ。それは他人事と切って捨てるにはあまりにリアルだ。併録の後日談も含めて、凡庸な価値観に風穴を開ける破壊力を見せつけられた思い。Let's Spend the Night Togetherを聴きながら。2016/09/27
なゆ
61
相変わらずどんどんずれていく夫婦の話。ずれるというか流されていくというか…確かに最後はぶっとんでしまって、可笑しくもある。『夜をぶっとばせ』は妻たまきの話。同窓会でのノリでパソコンを買ってしまってから、どんどん流されてゆく妻たまき。この妻の心がどうもよくわからない。DV夫の雅彦はもちろん悪いけど。『チャカチョンバへの道』は、離婚から3年後の雅彦の話。けれど瑶子と幸せ一杯で、『夜を…』での雅彦とは別人のよう。しかし、偶然別れたたまきを見かけてからまた話が変な風に転がり出す。瑶子もよくわからない女なのだ。2012/06/05
くりきんとん99
55
妻たまきの立場書かれたものとその3年後、夫の雅彦の立場から書かれたものの中編2編。前半は、井上さんらしい、落ちていく様が書かれていて、恐怖を感じ、相変わらずだなぁと思ったけど、後半を読み始めたところで思わず、前の方を確認。なんかイメージが全然違う。また違う意味で恐怖は感じた。この後どうなったのかがすごく気になる。2012/06/08
風眠
48
妻の目線と夫の目線で、それぞれ描かれた中短篇2篇で構成された一冊。DV夫とネットの掲示板で書き込みを続ける妻、いじめに合っている長男と、シメジしか食べなくなった神経症の長女。妻の目線で書かれた物語と、夫の目線で書かれた物語とでは、証言に大きな食い違いがあって、どっちが本当なのかは謎。私は女だから、ついつい妻のほうに肩入れして読んだ部分が多かったが、なんで離婚したのかが未だに分からないと、きょとんとする夫の気持ちも分かるような気がする。カギは、妻の同級生の女の人なんじゃないかな・・・うーん?藪の中・・・2012/07/08
nyanco
39
小児心理室に通う娘、いじめられている長男、働かない夫…10代の頃にはふわんふわんしていた私だって、変わってしまうんだ。PCでネットの世界を手に入れた主婦が、やがては出会い系サイトで出会った男たちとデートを繰り返す。誰かに助けてもらいたい人って、やっぱり居るんだろうなぁ。妻の視点から描かれた「夜をぶっとばせ」では、酷い旦那だなぁ…と感じていたのですが、夫目線で描かれた「チャカチョンバへの道」を読むと、確かに妻もとんでもないヤツだったのかも、と思えたり。続→2012/06/24