内容説明
依存は悪ではない。鍵を握るのは依存させる人なのだ。「愛だったはずなのに、なぜ苦しいのか」への明快な答えがここにある。長年、家族援助をしてきたベテランカウンセラーである著者が、愛という名のもとに隠れた支配・共依存を解明する。
目次
第1章 アダルト・チルドレンと共依存
第2章 共依存とケア
第3章 ケアする男たち
第4章 『風味絶佳』は「風味絶佳」だ
第5章 「冬のソナタ」は純愛ドラマか?
第6章 母の愛は息子を救えるか?
第7章 かけがえのなさという幻想
第8章 暴力と共依存
第9章 偽装された関係
著者等紹介
信田さよ子[ノブタサヨコ]
昭和21年、岐阜県生まれ。臨床心理士(原宿カウンセリングセンター所長)。お茶の水女子大学大学院修士課程修了。専攻分野はアディクション全般、アダルト・チルドレン(AC)、家族問題、DV(ドメスティック・バイオレンス)・虐待など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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まる
59
共依存がアルコール依存症から生まれた言葉だとは知りませんでした。前半は主にアルコール依存症の話。こういうものを読むと幸福な夫婦生活を送ることなんてできるだろうかと不安になってしまいますね。自分がジェンダー意識の塊であることを改めて認識しました。他人に押し付けないことは当然のこと、自分自身を縛り付けて苦しむことがないように注意したいです。最後の共依存は依存ではなく、支配。依存し、依存されることそのものは人間関係を豊かにする、という部分にハッとしました。依存してはいけない、と思うのも苦しいことですものね。2016/02/26
ネギっ子gen
56
【依存は悪ではない、鍵を握るのは依存させる人だ】愛だったはずなのに、なぜ苦しいのか? 長年家族援助をしてきた著者が、“愛という名”の下で行われる支配について解明。2009年刊。著者は書く。<誰かのために、という他者に対する美しく、そしてやさしさに満ちた行為を、しばしの間でいい、振り返ってみていただきたい。他者から依存されることの満足感をどれだけ自覚しているかを、改めて自分に問いかけてみていただきたい。本書が家族の現在や未来についてのヒントになり、そしてより「生きやすい」道への一歩になれば幸いだ>と。⇒2023/09/24
ころりんぱ
34
いつの間にか私も知ってた「共依存」っていう言葉。アルコールや、ギャンブル依存症、ひきこもりやDV、薬物中毒、摂食障害など問題を抱えた当事者の近親者の事を指す言葉だってなんとなくわかったつもりでいた。この本には、様々な事例、山田詠美の小説、寅さんや冬ソナまで引っ張り出して共依存を説明。日本に昔から根ざした夫婦の力関係、ジェンダー問題も含めて、興味深い。カウンセリングにかかるほどの問題を抱えてなくても、ありふれた夫婦、親子の関係性の中にも共依存の種はあるもんだなと、ドキッとする。素人にもわかりやすい。2013/09/16
katoyann
12
アルコール依存症や摂食障害など事例として、その嗜癖を助長する共依存について考察した本である。 著者は「ケアや愛情という美名のもと」に称揚される支配を問題視する。例えば、アルコール依存症には飲酒行動を可能にするイヌイブラーの存在が問題視される事が多い。著者によればイネイブラーは世話を焼くことで、パートナーを子どものような存在にとどめて支配しているのだという。 ただ、そのようなケア役割を行使することによってしか他者を支配できない女性の悲哀を強調してもいる。ケアに潜む入り組んだ権力と歪な暴力性に気づく一冊だ。 2020/12/31
ゆきうさぎ
5
お世話することで相手を自分に依存させ、自分も”依存される状態”が生き甲斐となる関係を”共依存”と呼ぶが、むしろ”支配”と呼ぶべきではないかという主張。ドラマや映画の例は観ていない者には「?」な部分もあるが、性別役割やジェンダー論も含めた”男性主体の共依存”と”女性主体の共依存”の分析は考えさせられる。後半の「親子の役割が逆転した母娘」の部分は実はかなり世間に多い話なのではないかと思った。2015/04/05