感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きいち
22
アーレントの到達地点。ギリシャローマにカントヘーゲルハイデガー、西洋哲学の伝統がっちり踏まえてそこから次へと進めていく一つ一つの論理の道行はとてもしんどくて理解できてるとはとても思えないけれど、アイヒマンの姿「悪は思考の欠如から引き起こされる」から出発し、思考は自己の中に退きこもっての他者との対話、事実の追求ではなく意味の追求であること、思考するとき我々は過去と未来の挟間にいること、意志や判断との違い…と説かれていることそれぞれへの共感を頼りになんとか読み進めていく。オンデマンドで高額だけど十分得心いく。2020/07/26
魚京童!
17
考えると浮世を離れる。現実問題を解ききれない。考えないとユダヤ人を運ぶ。そもそも考えることが言語ゲームだ。第二次世界大戦も考えなかった。今の資本主義社会も考えない。ディストピア小説はどれも考えないことで成り立っている。人間はこの方向を進んでも未来がない。ならばどうするか、みんなで考えればいい。現実問題はグーグルに、ロボットに任せればいい。家でのんびり観想生活だ。と私は思うけど、ハンナはどう思うかを(下)で確認したいと思う。悪が定義できないなら、悪になったっていいじゃないか。ええじゃないか、ええじゃないか2020/08/14
とみぃ
16
ずいぶんと骨のある著作で、油断するとすぐに置いてけぼりになる。ということで、のっけから置いてかれてしまい、訳の分からないまま文字列だけは見終わった。思考は日常世界(現象)から意識的に退きこもることによってのみ姿を現すという。演劇の比喩だと、要するに演者として舞台で活動するのが日常で、そこから退いて観客の立場から舞台全体を見渡し、その意味を探究するのが思考ということらしい。何にも考えず振舞うのではなく、いったん日常から退いて思考したのちに、現象世界での振舞い方を決める、そうした意志が大事ということなのか。2020/08/02
いとう・しんご
8
アレントの未完の遺稿から。アレントは思考しながら活動できない、活動どころか存在するら思考妨げる、でも、活動を止めて思考しなければアイヒマンのように悪の凡庸に転落する、命を賭けて思考を追求したソクラテスの偉大を描きながら、そのように主張しているように思われます。2025/05/06
Y.Yokota
3
とても読めたとは言い難いけれども、ナチスのアイヒマン裁判を通じて、人間の悪とは悪意をもってなされるのではなく、何も考えないことによってなされるのではないか、という考えはとても共感できる。ハンナ・アーレント最期の著作で、本来は3部作となる予定が「思考」「意思」を遺して「判断」は未完に終わっている。2019/11/03