感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
72
30年ほど前に買ってパラ読みしていた単行本を読了。1991~2年に雑誌「世界」に連載されていたものをまとめたもので、多くのヴェトナム人関係者へのインタビューに基づく、「オーラル・ヒストリー」的なもの。扱う時期は1945年の日本の敗戦と独立宣言から、1990年初頭の「ドイモイ」がまさに登場した瞬間まで。特に歴史の「転機」を重視しているため、すっきりと読みやすい。アメリカが社会主義浸透を恐れるばかり、「民族解放・独立」というヴェトナムの人々の意思を読み違えていたこともくっきり浮かび上がる。あの戦争を知る良書。2023/02/03
nnpusnsn1945
48
日本占領期から仏、米、カンボジア、中との戦争を描いた本。やや北よりかもしれないが、比較的冷静な文体である。三野正洋氏が『わかりやすいベトナム戦争』でお勧めしていたのも頷ける。搾取による大量餓死、残留日本兵の独立関与といった日本軍の功罪にもしっかり触れられている。日本兵はクァンガイ陸軍中学の教官を務め、ベトミンを指導している。映画『イントルーダー』でゲリラが小銃の対空射撃をしていたが、日本軍のマニュアルが元になっているらしい。アメリカとの戦争では、人種問題(公民権運動とも重なる)、麻薬問題にも言及している。2021/03/05
白義
8
ヴェトナムの視点から見る、インタビュー資料を豊富に用いて再構成されたヴェトナム戦争史。対仏抵抗から南のサイゴン政権、アメリカや中国との戦いまで、実際に重要人物たちの思考過程が垣間見えるような労作。多くのヴェトナム戦争史が、実はアメリカ側からの衝撃をよくも悪くも内面化しているのかもしれない、ということも感じさせられた。民族解放主義者たちの撹乱戦法に、コンピューターを用いた統治を合理的に行おうとしたアメリカが勝てなかった、というのはやはりどれで読んでもいろいろ考えるところがある2012/11/20
叛逆のくりぃむ
6
サイゴン特派員を務めた著者によるベトナム戦争通史。1941年のベトミン結成からカンボジアとの第三次インドシナ戦争までを題材としている。読みやすくまとまっている。2021/08/11
ろーじゃ
5
アメリカ側の視点で見る事の多いベトナム戦争を、インタビュー等や史料を通してベトナム人側から眺める良本です。やはりベトナム戦争の事はベトナム人に聞くと、より臨場感が得られて良いと感じた一冊です。 戦いの名前や南ベトナム側の人物、中越戦争あたりの記述が充実している点も個人的には高評価です。2015/01/21