出版社内容情報
今からおよそ600年前、和人が本格的に侵入する前の豊かな自然の中で、アイヌの人々はどんな暮らしを営んでいたのか。「いつも食べる物がある」という意味の名をもつアイヌの女性ハルコロの生涯を軸に、日々の手仕事や狩猟の様子、祭り、誕生と死にまつわる文化など、アイヌの世界を生き生きと描く物語。(解説=中川裕)
内容説明
今からおよそ六〇〇年前、和人が本格的に侵入する前の豊かな自然の中で、アイヌの人々はどんな暮らしを営んでいたのか。「いつも食べる物がある」という意味の名をもつアイヌの少女ハルコロが成長していく中で出会う、さまざまな出来事、心ときめく青春の物語を通じて、アイヌの世界を生き生きと描く。
著者等紹介
石坂啓[イシザカケイ]
1956年生まれ。漫画家。手塚治虫氏に師事
本多勝一[ホンダカツイチ]
1931年生まれ。ジャーナリスト。『週刊金曜日』編集委員
萱野茂[カヤノシゲル]
1926‐2006年。アイヌ文化研究。二風谷アイヌ資料館を創設、館長を務めた。アイヌ初の国会議員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふう
76
表紙に〔漫画〕石坂啓〔原作〕本田勝一〔監修〕萱野茂とあり、かなり詳しく調べられた作品だということがうかがえます。アイヌの歴史を思うと、どうしても和人からの迫害や同化政策の苦しみ悲しみが浮かんできますが、帯には『滅びゆくとか虐げられたとかいったラベル話貼られていない作品』とありました。壮大な北の大地。家族や少女たちの暮らしや成長の様子が、今のわたしたちのそれと同じようにいきいきと描かれています。違うのは、彼らが恵みをもたらす自然に常に感謝し、謙虚な気持ちで暮らしていたこと。その自然の描写がていねいで ↓2021/06/21
井月 奎(いづき けい)
34
日本列島の北端に豊かな神の世界と文化があることを教えてくれる漫画です。石坂啓の美しい線で描かれる神々、人々、自然、時がそれぞれに関係しあい命をはぐくむことが歌うように描き進められています。アイヌ民族のことは政治的、民族的に難しいことも多くあって向かい合うことを避ける傾向にあるように思います。けれども日本の根幹をなす民として、豊かな神話、物語を持つ人々の文化と文明は私の思考の一端にも彩をもたらせてくれているはずです。人への興味がいやます読書となりました。2021/07/10
まると
24
朝日新聞の敏腕記者であった本多勝一さんの著作を原作とした石坂啓さんの名作漫画が復刻されたと聞き、早速入手。第1巻は和人進出以前の平和なアイヌモシリを描いている。初刊は1992年というから、旧土人法施行下で、国がアイヌを先住民と認めるはるか以前のこと。差別やうるさ型団体も存在していたこの時期に、連載まで持っていったこと自体、画期的なことだ。中身もまた茅野茂さんの監修を得てアイヌの世界観・文化を的確に描いている。「ゴールデンカムイ」のようなエンタメ性はさすがにないが、筋書きも飽きさせず、素晴らしいの一言です。2021/09/19
あきあかね
23
「この漫画はエンターテインメントの分野で初めて、「滅びゆく」とか「虐げられた」とかいったラベルを貼られていない、アイヌが自分たちの世界観のもとで自由に生きていた時代を描き出し、彼らに共感を覚えさせることのできる作品となった。」 この帯紙の言葉に惹かれて本書を手にした。まだ和人に侵略される前の、大自然に包まれて生きるアイヌの人びとの暮らしが、少女ハルコロを中心に伸びやかに活写されている。 随所に見られるアイヌ語も魅力的だ。「アイヌ ネノアン アイヌ エネプネナ(人のなかの人になりなさい)」、⇒2022/12/11
Bo-he-mian
18
ここ十数年の間にアイヌ文化への関心や再評価が高まっているが、本作は「アイヌという言葉を使う事もためらわれるような空気が世間にあった」'89年に、アイヌを題材として扱った先駆的な漫画作品である。原作は本多勝一氏で、本作の2~3割が漫画を描いた石坂氏によって創作されている。内容は、「和人」による侵略前の北海道を舞台に、アイヌの集落に暮らす少女ハルコロの青春を綴った物語である。石坂氏は手塚治虫の弟子で、絵柄的には高橋留美子と手塚タッチが融合したような、可愛らしく親しみやすい画風。時々、手塚っぽい構図が出てくる。2021/07/17