出版社内容情報
生誕130年を迎える文豪による『万葉集』の口述での現代語訳.下巻には巻十三から巻二十を収める.(解説=夏石番矢)(全三冊)
内容説明
日本最古の歌集『万葉集』。この古典文学を味わうために、二十九歳の青年折口信夫は、口述による現代語訳に挑戦、これを成し遂げた。本書は、刊行から百年を経た今日でもなお、日本文学の至宝を鑑賞するための最良の指標となっている。下巻には、巻第十三から巻第二十までを収める。(全三冊)
著者等紹介
折口信夫[オリクチシノブ]
1887‐1953年。民俗学者、国文学者、詩人・歌人(釈迢空)。大阪生まれ。國學院大学国文科卒。中学校の国漢教師の後、1921年、國學院大学教授。1928年、慶応義塾大学教授。民俗学、国文学研究で独自の領域を開拓した。文学者としても、1925年、処女歌集『海やまのあひだ』刊行以後、多くの詩集、歌集、小説を残した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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やいっち
81
感想など僭越だろう。万葉集は、四半世紀以上昔、中西版万葉集を読んで以来。当時は若さに任せ勢いで読んだような。何処まで味読できたか危うい。それでも、全巻を読み通したという自信めいたものは胸の奥に潜めることが出来た。自分は富山市の人間だが、万葉集の編纂に関わったとされる大伴家持は、高岡市に国守として赴任し、5年滞在した。だから富山県人としては少しは歌集に触れておきたかった。 今回は、もう再々の再読はあり得ないだろうと、ゆっくりじっくり詠んできた。それでも、味読とはいかないが、まあ、触れることが先決だろう。2022/03/15
roughfractus02
8
巻第13から第20までを収録した本巻は、人麻呂、憶良、旅人、坂上郎女と見覚えのある歌が並ぶが、確かに上中巻に比べると、近代教育において文字言語教育に見合うような作者の「心情」を読み取れる歌が多いと感じる。著者が後に階級を貴族とそれ以外に分けたのも貴族階級のシャーマニズムの言語使用とそこから逸脱する使用を意識していたからだろう。本巻には旅人のように奈良の土地を離れた人、東歌、雑歌、防人歌、遣新羅使を見送る人の歌等が多く、シャーマニズムの土地にまつわる言霊の力が希薄化して「心情」が生まれる過程が垣間見られる。2025/03/19