出版社内容情報
日本古典に独創的な世界を拓いた、生誕130年を迎える文豪の作品。二十九歳の青年が、『万葉集』全歌を口述筆記させて現代語訳をした特異なる書。折口は、原文以外、参考書は一冊も参照していない。全編に若さと才気が溢れている。中巻には、巻第九から巻第十二までを収める(全三巻、解説=安藤礼二)。
内容説明
日本最古の歌集『万葉集』は、日本人の言葉の故郷とも呼ぶべき古典である。青年折口信夫は、古代の万葉歌の魅力を近代人に知らしめるために、初めての口述による現代語訳に挑戦した。本書は、日本文学の至宝にふれるための最良の案内書である。中巻には巻第八から巻第十二までを収める。
著者等紹介
折口信夫[オリクチシノブ]
1887‐1953年。民俗学者、国文学者、詩人・歌人(釈迢空)。大阪生まれ。國學院大学国文科卒。中学校の国漢教師の後、1921年、國學院大学教授。1928年、慶応義塾大学教授。民俗学、国文学研究で独自の領域を開拓した。文学者としても、1925年、処女歌集『海やまのあひだ』刊行以後、多くの詩集、歌集、小説を残した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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やいっち
71
読むほどに短期間で口述で訳しとおした折口の凄さを感じる。歌にもその解釈にも若い折口の勢いや自負がにじみ出ている。同時に、万葉仮名で原文を読んでみたくなる(万葉仮名とは、「楷書ないし行書で表現された漢字の一字一字を、その字義にかかわらずに日本語の一音節の表記のために用いる」もの)。2022/03/05
roughfractus02
9
本巻は『万葉集』20巻中の巻第8-第13までを収録する。後に叙景に分類される歌の多い上巻に比べ、中盤は抒情歌、特に恋愛の歌が多くを占める。歌の世界に入れば、離れているゆえに募る思いや噂を気にする素振り等エピソードのパターンはさほど多くない。が、そこに著者は「傑作」「佳作」の言葉をつけて自身の評価傾向を読者に示す。著者が評価するのは、恋愛する者たちの心情に言葉が費やされる歌ではない。社、花、石、水、月等の世界を見つつ詠む詠み手自身を情調で満たす歌である。抒情は世界と自己が創る「今」を出現させる力なのだろう。2025/03/18
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