出版社内容情報
戦局が敗色濃くなるにつれ、軍部と政府の弾圧は、いよいよ苛烈さを増していく……。戦中から戦後の言論の裏面史を暴いた社会小説の力作。
内容説明
戦局が敗色濃くなるにつれ、軍部と政府の弾圧は苛烈さを増し、「新評論」は、いよいよ四面楚歌に追い込まれる。日米開戦前夜から戦後の日本国憲法施行に至るまでを時代背景に、出版社社長の葦沢悠平とその家族の苦難を描いた社会小説の大作。下巻では、戦争末期から戦後まで、時世の激しい振幅にひたすら翻弄される人々の姿を追う。
著者等紹介
石川達三[イシカワタツゾウ]
1905‐85年。秋田県生まれ。小説家。早稲田大学文学部英文科中退。1935年、『蒼氓』により第一回芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ソーダポップ
18
太平洋戦争開戦直前の1941年から戦後の47年までを時代背景とした、出版社新評論社を経営するリベラリスト葦沢悠平とその家族の苦難を描いていた。葦沢社長は、同社が戦時下に被った言論弾圧(当時の横浜事件)の様相も書き込まれていた。戦後、新評論社に起こった労働争議の場面を通しても当時の激動する時世が捉えられていたように感じた。作者石川達三の得意とされている徹底的に調べたあげた手法による代表的な社会派の作品で社会観、時代観が随所にうかがい知る事ができた。上下とも素晴らしい作品でした。2025/05/06
あいうえお
0
【ネタバレあり!】一気に読了。何がすごく面白かったということもないが、時代の空気を感じられたし、感情の描き方がリアルだった。とにかく手の止められない本だった。しかし、「戦争というものは、人間を無駄づかいするものだよ」というセリフと、信念を持ち続けることの難しさとを学んだ気がしている。2017/09/20
FumiSUN
0
☆92015/12/08
ぼび
0
7/52017/01/24
Yakmy
0
大衆は強風に逆らうことはできずに、あっさりと風になびいてしまう。戦時統制下では、右翼的思想に。そして戦後に流入した共産党的思想によって、あっさりと左になびく。その象徴として、軍国青年として入隊した悠平の息子、邦雄は、復員後に共産党の活動に没頭していく。激しく恋をしたはずの女性との関係はあっさりと断ち切って。よりどころのない不安定な若者の心が痛ましい。ついでに、腹立たしい。自分もこんな風になっていやしないかと思ってしまう。2015/09/11
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