出版社内容情報
平家一族の全盛から、滅亡に至るまでを描いた軍記物語の代表作。日本人に愛読されてきた国民的叙事詩を、文豪尾崎士郎の名訳で味わう。
内容説明
『平家物語』は、平清盛を主とした平家一族の全盛から、滅亡に至るまでを描いた軍記物語の代表作。多彩な人物を登場させ、人物間の葛藤、雄大な合戦場面が次々に展開される。琵琶法師により語られた律動感溢れる哀切極まりない名文は、今なお読む者を飽きさせない。『平家物語』を長く愛読してきた文豪の名訳で味わう。上巻には、平家一族の栄華と驕りから始まり、清盛の悲愴な最期を描く巻一から巻六を収める。
著者等紹介
尾崎士郎[オザキシロウ]
1898‐1964年。小説家。愛知県幡豆郡(現西尾市)生まれ。早稲田大学政治科中退、大逆事件の真相解明のため売文社に拠る。高畠素之を追って国家社会主義に身を投じる。1921年に『獄中より』で、小説家として独立する。1933年から「都新聞」に早大生青成瓢吉の人生遍歴を描いた『人生劇場』を連載し、大ベストセラーの長編小説となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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❁Lei❁
21
2021年放映のアニメ「平家物語」を視聴してから読んだので、訳のわかりやすさも相まって、よく理解できました。本書のシビレるところは、「祇園精舎の鐘の声」以下の有名な部分を原文のまま、冒頭に引用している点です。そこだけは原文で読みたいというニーズに応えてくれています。さて上巻には、寺社焼き討ちや僧侶・貴族の不条理な島流しといった平家の横暴が描かれています。思慮分別を備えた重盛が亡くなってしまったことが、平家滅亡に拍車をかけたでしょう。お気に入りは、紅葉を薪にされてしまっても寛大に許した高倉天皇。2024/03/30
まこ
13
再読してみて、清盛たち平家の多くの人たちには相手を思いやる描写がなく、ただ怒りや恨みを行動に移しているだけでこれが奢りか。清盛父が公家の報復を警戒していた姿が、後半の平家にはない。平家の中でも人を思った重盛や、圧倒的な力でまとめた清盛が死に、碌なことにならない感満載。この後の不吉さを表すように災害や火事が起こる。神頼みでお寺を建ててお坊さんが力をつける、これ、悪循環。2021/09/13
α0350α
10
これは読み易いですね。以前読んだ与謝野晶子訳の源氏物語よりも全然良かったです。内容は誰が何をしたという何気ない日常パート的なヤツが面白いですね。清盛はまさにおごれる人でした。下巻は壇ノ浦までにどんな話があるのか楽しみです。2016/09/18
まこ
6
この作品は光と闇を映し出すという。闇=武士だった平家が光=権力の側に変わることもそうだが、前半では平家に負けた人たちのその後に触れることで平家の今後が良くないものだと暗示させる。後半は打倒平家を掲げる人たちが活躍しだし、負けるが救いのある人たちも出てきて段々平家の力が弱まっている。災害が起こるとすぐ神社仏閣を建てて財政を破滅させたのが貴族なのになぜ平家は同じことを繰り返すのか。2020/04/11
TomohikoYoshida
6
日本の古典というのは、なぜストーリーを淡々と語るのか?そして、なぜ淡々とした文章ながらに、時折、心に響くエピソードがあるのか?という疑問を持ちながら、話を読み進めていくと、清盛入道が死に、時代の流れが変わっていくのを感じ、また淡々とした語りを読みながらワクワクしはじめるのである。淡々とした文章の中に、読者の気持ちを動かす何かがある。2019/02/11