内容説明
『古事記』は、人間味ゆたかな神々によって、日本国の成立していく生命力あふれる過程を描いた最も雄大な叙事詩であり、古代の神々の葛藤、闘争、恋愛の劇的な起伏を伝える物語でもある。口誦と歌謡の韻文を踏まえた豊かな文芸性に富んだ日本最古の文学書。本書は、詩人、国文学者、蓮田善明三十一歳の作品。早熟の天才の筆には微塵のためらいもなく、詩人の情熱と国文学者の精確さを兼ね備えた独自の格調高い現代語訳で、日本神話を味わう。
目次
上巻(天地初発;神世七代;国土生成 ほか)
中巻(神武天皇御東征;伊須気余理比売命;当芸志美美命の乱 ほか)
下巻(仁徳天皇;御仁政;石之日売命の御嫉妬 ほか)
著者等紹介
蓮田善明[ハスダゼンメイ]
1904‐1945年。文芸評論家、詩人、国文学者。熊本市生まれ。広島文理科大学国語国文学科卒。1938年、成城高等学校教授就任。学習院教授清水文雄らと雑誌「文藝文化」を創刊。十六歳の三島由紀夫を見出した。1938年、出征。1943年、陸軍中尉として南方戦線に派遣される。終戦時、マレー半島ジョホールバルにて、自決(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mazda
33
これまで読んだ古事記の本に比べて、読みやすく書かれていた。因幡の白ウサギ、ヤマトタケル、海幸山幸、歴代天皇など、詳細に記述されていることを改めて知った。仁徳天皇の逸話を読むと、デフレ下で増税をする今の政治家など言語道断である。作者の方が、終戦とともに戦地で自決された、というのが何とも痛ましい…。41歳と言ったらまだまだこれから、という年齢なのに、残念でならない。2013/11/26
叛逆のくりぃむ
9
數ある古事記の現代語譯中、白眉と言へるもの。著者は、三島由紀夫を見出した人物として知られてもいるが、この現代語譯から著者の國學に對する造詣の深さや文學者としての感性の一端を見出すことが出來る。また、この樣な著書を出版する岩波書店の懐の大きさにも驚いた。2013/09/21
SIGERU
8
崇高にして卑小、高貴にして猥雑。日本最古の文学であり神典でもあるこの書を生れて初めて逐語訳で読み、あらためてその世界の曠大さ、器の大きさに深く心を搏たれた。読んだ人は分ると思うが、神典ゆえに襟を正して読み始めても、イザナギ・イザナミ神による国生みのくだりでまず困惑させられる。「わたしの余った所をそなたの足りない所に刺しふさぐ」って何だ?これは春本か?しかも、下がかった記述はこの箇所だけではないのだ。ふつうの感覚では到底両立し得ないものを見事に聳立させてしまう文学の力を感じた。2016/11/13
西岡剛
3
全く理解できないんだろうなと予想していたが結構読めた。で、思ったことは昔は日本にも鰐がいたのかしら?ということ。2019/09/19
TomohikoYoshida
2
ギリシア神話がそうであったように、神話というのは幾多もの神々の名前を把握しておかなければならない。 古事記も上巻は明らかに神話であり、沢山の神々の名前が出てくるが、それを記憶することができない。 天の岩戸、八岐大蛇、因幡の白兎などの神話を「古事記」という形で読み直すことができたのが、収穫のひとつであろうか。 訳者の蓮田善明の「古事記を読む人々へ」、高藤武馬の「あとがき」、坂本勝の解説で、この本への想いというものをなんとなく理解できれば、それで十分な成果だと思う。2016/10/04
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