内容説明
神話性をおびた明るさ、大らかな恋、大陸文化の影響、皇統をめぐる確執―。『万葉集』は、激動の古代史のなかで、若々しく生成する一個の生命体ともいえる。現代を代表する詩人は、その感性と直観のすべてをひらいて、この大詞華集のひろびろとした言語世界を味わい、現代にも通じる限りない魅力を本書に凝縮した。
目次
1 『万葉集』を読む前に
2 時代の背景と『万葉集』
3 初期万葉の時代
4 近江朝の唐風文化と壬申の乱
5 皇子・皇女の歌
6 柿本人麻呂
7 柿本人麻呂歌集秀逸
8 人麻呂以後の歌人たち
著者等紹介
大岡信[オオオカマコト]
1931年、静岡県に生まれる。詩人。53年東京大学文学部卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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わたなべよしお
17
やっぱり大岡信さんっていいよね。言葉の用い方が何というかいい。書いてあることもハッと気づかされるようなことが多い。流石。ただ、高校の時から、万葉集よりは古今集の方が好きで、この本を読んでも、万葉集の良さは未だによく分からない。ちょっと悔しいけどね。まあ、この本は折々に読み返すことになるだろう。2022/03/16
yamahiko
17
期せずして、最終章に置かれてあった贈り物を受けとることができました。 それはさておき、万葉集の豊潤な魅力を知ることができる良書です。敬愛する詩人である大岡信氏に改めて感謝。 2019/05/02
クラムボン
13
大岡信には「万葉集全20巻」を各巻ごとに鑑賞した講談社「私の万葉集・全5冊」があるので本命はそちらだが、いつの日かのお愉しみとしよう。この本では先ず「万葉集」の一大特徴…政治的な背景を説明したあとで130年間を歌風の変化に沿って四期に分けて順に論じる。そこでは柿本人麻呂を最大の歌人として別格扱い、全体の半分を割く。もう一人山上憶良も人の生死を哲学的な態度で格闘した詩人として評価する。そして大伴旅人らとの大宰府での文人サークルが、その後の「古今集・伊勢物語」の創作に繋がる流れを産んだと捉える。これは明快だ。2023/10/10
アリョーシャ
7
詩人の大岡信が、「そりゃ、何たって面白いからです」という万葉集の魅力を語る。序盤で、訓読や時代背景など、最低限の基礎知識の説明があるのはありがたい。すべての和歌に現代語訳があるわけではないので、多少の知識と意味を読み解こうとする努力は求められる。 取り上げられるのは短歌だけではない。柿本人麻呂の長歌、反歌の部分はとりわけすばらしい。長歌には試訳がついていて、著者が詩人であることが生かされている。 2016/11/29
のむ
5
詩人の語る万葉集。歴史学者や国文学者でないが故にこそ闊達にのびやかに論われた万葉世界。とはいえ定説は踏まえているのでご安心。山上憶良について「コンプレックスにみちた知識人」「周囲の人々に煙たがられる存在」とか言ってて笑った。2018/05/30