岩波現代文庫
幻景の明治

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  • サイズ 文庫判/ページ数 296p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784006021085
  • NDC分類 210.6
  • Cコード C0195

内容説明

幕末維新から日露戦争に至る時期の社会事象を例に、明治の特質を発掘、再構成してその原風景たる「幻景の明治」を見定める。「御一新」のエネルギーの行方、高橋お伝が毒婦とされた理由、日露戦争時期の猟奇的殺人事件の容疑者や日比谷焼打ち事件の仕掛人などについて考察し、文学研究と歴史研究の関わりを論ずる。

目次

「維新」か「御一新」か―明治維新と近代文学
儒学の言葉、啓蒙の言葉
高橋お伝と絹の道
飛ぶ歌―民権歌謡と演歌
パノラマと『舞姫』
書生の小遣帳
陰画の街々
三島通庸と鹿鳴館時代
元田永孚と教育勅語
井上哲次郎と高山樗牛
志賀重昂と日露戦争
嗚呼世は夢か幻か―野口男三郎事件顛末
日比谷焼打ちの「仕掛人」

著者等紹介

前田愛[マエダアイ]
1931‐87年。国文学者。神奈川県生まれ。57年東京大学文学部卒業。立教大学教授をつとめ、近代文学の独創的研究で著名(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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AKa

4
「高橋お伝と絹の道」にある明治初年の戯作・歌舞伎の事実性の強調について、前田は「彼らの標榜する「事実」は、結局、つくりあげられたメニューにすぎない」と指摘し、民衆も「事実そのものではなく、新奇な出来事がもたらす刺戟」を求めていたにすぎないという。これらは、新聞に、特に東京においては戯作者が深く関わっていたことと関係するだろうし、またそれに取って代わり現代まで続く報道新聞ほか各マスメディアの在り方や、それらが伝えるニュースの消費のされ方と相通ずるものがあるだろう。2019/07/11

iwasabi47

2
京極夏彦『書楼弔堂』や『まいボコ』の参考に。明治ものの事情が判る。『敗者の精神史』にも繋がる。日比谷焼き討ちの煽動家面白いな。2019/08/10

ほたぴょん

0
「サブカルチャーもまた文化である」とは大塚英志がしばしば書いていることだが、まさしくそれを地でいくような、サブカルチャーとして打ち捨てられ、埋もれていった明治の風景から、ハイカルチャーとしての明治時代文化史を撃つ論考。もちろん、前田先生の方が先駆ではあるけれども。本業である文学への言及は少ないが、高橋お伝や野口男三郎といった犯罪史、遊郭や民権歌謡などの俗娯楽、伊藤博文らのゴシップ記事から、その上を糊塗している楷書体の「明治」が何を隠しているのかを詳かにする手法は今読んでもスリリングですごく面白い。2012/05/07

ゆーいちろー

0
長らく積読本だった本書を最後まで読み通したのは、「平成の開国論議」かまびすしい世相を反映したためだろうか。輝かしい(と一般的には)思われている明治の、陰の部分を中心にした学術エッセイともいうべき短文集である。浅学の身には難しい部分も多々あるが、今の時勢と比べて読むとなかなかおもしろい。わたしにとって本書での最大の収穫は、「腐書生」という言葉の存在だ。昨今、ボーイズラブを好む女性を「腐女子」と呼びならわすそうであるが、それに似た言い方が明治時代にあったという事実が、驚きと苦笑をもたらす。2011/11/12

あだこ

0
謎解きのようで読者を楽しませつつも、「もうひとつの明治」を描き出して、民衆のなかにも近代をみている2009/06/30

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