岩波現代文庫<br> 無援の抒情

岩波現代文庫
無援の抒情

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  • サイズ 文庫判/ページ数 261p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784006020163
  • NDC分類 911.168
  • Cコード C0192

出版社内容情報

炎あげ地に舞い落ちる赤旗にわが青春の落日を見る-全共闘世代の闘いと愛と孤独をうたい,日常の風化に抗する意志表示として,熱い同時代的共感を呼びおこした歌集『無援の抒情』を中心に,自選の秀歌4百首を加えた新版.後藤正治解説.

内容説明

全共闘世代の闘いと愛と孤立をうたい、日常の風化に抗する意志表示として熱い同時代的共感を呼びおこした歌集『無援の抒情』を中心に、その後の歌集より自選した四百首を加えた。

目次

無援の抒情(完本)(われらがわれに還りゆくとき;冬の旅;曳航の旗)
青虹(1980年代作品抄)(「水憂」抄;「ゆうすげ」抄)
残照(1990年代作品抄)(「風の婚」抄;「夕駅」抄)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

262
1960年代後半に吹き荒れた安保闘争のさなかに青春を生き、しかも全学連に全身を投じた歌人がいた。道浦母都子である。「迫りくる楯怯えつつ確かめている私の実在」―これが歌集の冒頭歌。圧倒的な数と力を誇示する機動隊を前に、その隊列に突入していく。これが歌として優れ、したがってまた我々読者を震えさせるのは、歌が単に時代の証人だからではない。「怯えつつ」という表現に籠められた感情の表出が思わず迸るからなのだ。だからこそ「私の実在」に強い共感性が生まれる。そして、闘争の敗北と抒情の勝利がここに結実するのである。2013/04/05

関東大震災の被災者、特に虐殺された朝鮮の皆様に追悼・寺

63
「迫りくる楯怯えつつ確かめている私の実在/炎あげ地に舞い落ちる赤旗にわが青春の落日を見る-全共闘世代の闘いと愛と孤立をうたい,日常の風化に抗する意志表示として熱い同時代的共感を呼びおこした歌集『無援の抒情』を中心に,その後の歌集より自選した4百首を加えた.後藤正治解説」というAmazonの内容紹介丸写しでお分かりと思うが、学生運動の闘士だった著者が詠んだ革命短歌が素晴らしい。その後は2度の離婚や恋愛を経るのだが、その間に昭和天皇崩御や阪神大震災、オウム事件、金子ふみ子、永田洋子も詠う。面白い。お薦め!。2019/03/15

kaizen@名古屋de朝活読書会

40
#道浦母都子 #短歌 #現代女性歌人展 姉に似しわれなれば雨の隊列にいるなといいて去りし少年 海見つつ夜は明けんとす君も君も言葉なし今日は10.21 誇り持ち貧しさ選ぶと言いきりて君のかたえに海風を受く 半年ぶりの紅茶と告ぐる者の為手痛きまでレモンしぼれり いつしか涙と溶け合い流れゆく雨が私を惨めにするごとく降る 自らを見失うことなく生きん振り返るとき湖が輝く2016/07/12

松本直哉

20
スクラムのはざまで不意に香るレモンのように、独房で唐突に始まる生理のように、道浦のうたは読むものを不意打ちにする。原因と結果が衝突し、原理と論拠が血を流し合う世界のただなかで、すこしはなれて、一本の旗として静かに立つ。赤い旗はもはや燃え尽き、思想は色あせた。彼女の歌は無彩色の弔旗であろうか。風にあおられて倒れそうになりながら、唇をかみ涙ぐみながら、失われたときとものを弔って歌う。「明日あると信じて来たる屋上に旗となるまで立ちつくすべし」「今はもう弔旗と呼ばん一棹(いっとう)の詩よ曇天に哭くごとくあれ」2014/06/22

かふ

19
俵万智『サラダ記念日』がベストセラーになる前に最も売れた歌集だという。「全共闘世代」の挽歌であるこの歌集は最初に「われらがわれに還りゆくとき」と題されているように、全共闘世代から個人へ「還る」短歌であり、そこに女性の生理や恋が詠まれていることが青春短歌であり、例えば父との葛藤は現代の歌としても通じる。「催涙ガス避けんと密かに持ち来たるレモンが胸で不意に匂えり」「ガス弾の匂い残れる黒髪を洗い梳かして君に逢いにゆく」「調べより疲れ重たく戻る真夜怒りのごとく生理はじまる」センチメンタリズムの個人を感じる抒情性。2024/09/14

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