出版社内容情報
私小説を完成させた『奇蹟』の広津・葛西,第3.4次『新思潮』の芥川・菊池,詩と散文を両立させた春夫・犀星,社会主義文学作家たち.同時代文壇人の語る大正文学完成期の記憶.関川夏央解説
内容説明
私小説の完成を担った『奇蹟』の新早稲田派、第三・四次『新思潮』から文壇に登場した知的エリート群、『近代文学』を発端とする労働文学の旗手たち。実作家に親炙した人々の語る大正文学完成期の記憶。本巻は「葛西善蔵・広津和郎そのほか」「菊池寛と芥川龍之介」「春夫・万太郎・犀星・浩二など」「大正期の社会主義文学」。
目次
葛西善蔵・広津和郎そのほか―『奇蹟』の人びと(島村抱月・片上伸など;白鳥の『妖怪画』による開眼まで;トルストイ・チェーホフなど ほか)
菊池寛と芥川龍之介(芥川との出あい;芥川の印象;漱石との師弟関係 ほか)
佐藤春夫・久保田万太郎・室生犀星・宇野浩二など(佐藤春夫の文学;文体の問題から;文人意識について ほか)
大正期の社会主義文学―『近代思想』から『文芸戦線』まで(『近代思想』の思想について;『近代思想』の文学的周辺;『労働文学』と『民衆芸術論』 ほか)
感想・レビュー
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壱萬参仟縁
3
徳富蘇峰は『大正青年と帝国の前途』を書いたという(74頁)。ラスキンとの関わりで関心をもっていた人である。「生活第一、芸術第二」(160頁)と指摘する菊池寛。評者は、生活の芸術化のラスキン、モリスを思うが、菊池氏はそういう認識。勝本氏は、水上滝太郎氏のことを、人間として立派でも、いい文学作品を書くとも限らないと(218頁)。それをなんとかするのが、現代では大学の役割かもしれない。加藤一夫の『民衆芸術論』(310頁)などにも関心が出てきた。賀川豊彦。セツルメント運動は知っていたが、協同組合で覚えておきたい。2013/04/15