出版社内容情報
科学技術が高度に発達した現代社会において、人間は生きていくために必要な大切な何かを見失ってしまったのではないか。ユング心理学者である著者が、「たましい」「共時性」「死」「意識」「自然」など、近代科学から取り残された問題を考察し、宗教と科学の接点の位置にある心理療法について論じる。(解説=河合俊雄)
内容説明
科学技術が高度に発達した現代社会において、宗教が提供してきた、人間が生きていくために必要な大切なものはどうなったのか。ユング心理学者である著者が、「たましい」「共時性」「死」「意識」「自然」など、近代科学から取り残されてきた問題を心理療法の視点から考察し、宗教と科学の新しい接点の可能性を論じる。
目次
第1章 たましいについて
第2章 共時性について
第3章 死について
第4章 意識について
第5章 自然について
第6章 心理療法について
補論 宗教と科学の対話
著者等紹介
河合隼雄[カワイハヤオ]
1928年兵庫県生まれ。京都大学理学部卒業。1962年よりユング研究所に留学、日本で初めてユング派分析家の資格を取得。京都大学教授、国際日本文化研究センター長、文化庁長官などを歴任。2007年7月逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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呼戯人
24
本棚の端っこの方に埋もれていた本書を見つけて、読み出した。もう約40年前の本であるが、最近岩波現代文庫で復活した。1980年代の頃の時代の息吹に吹かれて、臨死体験とかトランスパーソナル心理学とかが扱われている。ユングの主張する共時性に関しては、私たちも時折体験するが、それが科学で扱う因果律に取って代わるものだとは思えない。ただ心理療法の場面では非常に重要な現象として、非科学的だなどと否定してしまうのは片手落ちになるだろう。魂の問題を扱うときに非常に重要な概念だと思う。2023/02/09
roughfractus02
13
『心理療法序説』でも臨床経験は科学の知と宗教の信の間に置かれたが、本書では、知識を蓄積する医学と経験を積む医療の間の複雑な関係を体験する立場から、医学が扱いづらい医療の現場を科学の知の因果性に収まり切れない想像力の働く「たましい」の場と呼び、言語化不能だが全体の調和を感じる力の存在を示唆する。臨床時に見られる「意味ある偶然の一致」というユングの共時性概念を取り上げる著者は、この一致を因果的に見ればオカルト化する点を指摘しつつ、偶然や曖昧さを扱う別の捉え方として配置(コンステレーション)なる考えを提起する。2022/12/21
西島嵩人
6
分かりやすい文字通りの『宗教と科学の接点』について触れている、と言うよりは、少し迂遠にそれに関わる周辺を語ったような内容。一番印象に残ったのは、(これは自分での要約だが)Aさんが死んだのはどうして?、という問いに対して「心臓発作だよ」と答えるのが科学であり、「君の成長を見届けて、この世に未練がなくなったからだよ」と答えるのが宗教だとのこと。2025/05/10
とむぐりーん
2
治療者の態度は、クライアントに対して、出来る限り人為を排して、自然(じねん)の働きに任せる、「たましい」のレベルにおいて、本人のこころの声を聴いて行き、原因と結果にこだわらず、意味のある構図が見えて来るのを待つといった非常に高次元の治療、患者の自己治癒力に委ねるというところに河合隼雄先生の暖かさが垣間見えます。 自然治癒力というものを自分の中に育んで行きたいと 改めて思いました。2022/11/29
Go Extreme
2
たましいについて:トランスパーソナル学会 人間存在 西洋近代の自我 東洋と西洋 共時性について:易 科学 宗教 ホログラフィック・パラダイム 心身の相関 死について:死の恐怖 死の位置 臨死体験 死後生 意識について:無意識の発見 東洋の知恵 スーフィー的意識の構造 意識のスペクトル 修行の過程 自然について:人と自然 自然とは何か 自然・自我・自己 東西の進化論 自然の死 心理療法について:自己治癒の力 治療者の役割 コンステレーションを読む 意識の次元 宗教と科学の接点 宗教と科学の対話2021/06/28