出版社内容情報
私たちが何かをしようと意識するよりも前に脳の活動が始まっている。この発見が哲学において名高い自由意志の論争に衝撃をもたらしたように、リベットが提示する実験結果に裏づけられた驚愕の知見は、幅広い分野に大きな影響を与えてきた。脳と心や意識の関係を考える上で必読の、脳神経科学の歴史に残る研究がまとめられた一冊。
内容説明
私たちはみな、少し“遅れて”生きている。自由意志、心脳問題、無意識と意識…人間をめぐる深淵なる謎に切り込む一級の証言。
目次
第1章 本書のテーマ
第2章 意識を伴う感覚アウェアネスに生じる遅延
第3章 無意識的/意識的な精神機能
第4章 行為を促す意図―私たちに、自由意志はあるのか?
第5章 意識を伴う精神場理論―物質からどのようにして心が生じるのか?
第6章 結局、何が示されたのか?
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
73
「私たちが何かをしようと意識するよりも前に脳の活動が始まっている。この発見が哲学において名高い自由意志の論争に衝撃をもたらしたように、リベットが提示する実験結果に裏づけられた驚愕の知見は、幅広い分野に大きな影響を与えてきた」という。岩波の初版から15年以上を経て岩波現代文庫に入った本。この手の本では珍しいようだ。 2021/09/21
neputa
13
例えば車の運転中に子どもが飛び出してきたので停車した。この時私は「子どもに気づきブレーキを踏んだ」と知覚する。だが脳の活動を観察すると実感と異なる。視覚刺激に反応しブレーキを踏む動作を行ったのは無意識の活動であり、意識つまり私の知覚はそこから0.5秒もあと。意識より前に準備電位と呼ばれる無意識の電気信号が先に立ち上がる。1983年、ベンジャミン・リベットは科学的な実験によりこの事実を確認した。本書はこの実験を詳細に記述した一冊。専門的なレポートは難解だがリベットの考えや仮説など読み物としても楽しめる。2024/07/30
みき
12
ウェアネスは事象の0.5秒あとになる、というワクワクするような自由意志の存在への疑いのはなし。物質の構造だけではそれらの機能を説明しきらない、という実際世界の現象が、もちろん脳の神経パルスと精神にも当てはまる。構造と機能が緊密な関係であるように、身体と心も緊密な関係である。正直、心身の二元論は浸透しすぎて私自身それを疑っているのか、もうそれが自分の前提になっているかも曖昧ではあるけれど、自己とか自由意志のことを考え直すヒントになるような話。2021/10/18
MO
10
巷で自由意志はない。という人が引き合いに出すのがこの本なので良く読んでみたら、自由意志はないなんて言ってないじゃん、むしろある意味ではあるかもよ、とさえ言っている。やっぱ自分で読むって大切だね。難しい本ではないけど、極論、第6章だけ読めばOKです。詰まりは自発的に思考するよりも早く行動が始まっているということで、僕らは後追いで作られた幻想の世界を生きていることになる。瞑想でゆっくり動くのはこの0.5秒のバッファーを無くすためなのではなかろうか?魂に言及しているのも良い。2022/02/07
くらーく
4
下條信輔氏の岩波現代文庫収録にあたっての解説をメインに。それまでは、ざーっと図と図の解説を中心に。通常、論文だと、アブストラクトと結果と図でしょう。同じ読み方をしました。正直、分かりませんので。 で、本書の内容は、脳と意識に関してはほぼ確立された実験と結論のようですね。ほうほう、と。 まあ、0.5秒の遅れについて、発見したと。自分の頭の中(体?)で起きている事なのだけど、実感することは。。。わからんな。年とともに反応が鈍くなるのは実感しているけど。 以前に読んだ統合情報理論の事も触れてあって。。難しいね。2021/12/04