出版社内容情報
敗戦から占領、そして復帰を経て今日まで、基地の重圧と対峙し続けてきた沖縄の人びと。苦難の歩みの中で培われてきた曲折に満ちた思想像を、深い共感をもって描き出し、沖縄の「いま」と向き合う視座を提示する。人名索引付き。
内容説明
敗戦から占領、そして復帰を経て今日まで、基地の重圧と対峙し続けてきた沖縄の人びと。苦難の歩みの中で培われてきた曲折に満ちた思想像を深い共感をもって描き出し、沖縄の「いま」と向き合う視座を提示する。沖縄と日本の関係について歴史を踏まえて考えるための最良の手引き。現代文庫版には「付沖縄戦という体験と記憶」および人名索引を新たに収録する。
目次
はじめに 沖縄のいまから
1 「占領」という檻のなかで―一九四五‐一九七二年(戦争と占領を衝く;焦点となった復帰)
2 「日本」という枠のなかで―一九七二‐二〇一〇年(文化意識の再構築;問われゆく復帰)
むすび―沖縄のいまへ
付 沖縄戦という体験と記憶―「沖縄戦記録」1を通して
著者等紹介
鹿野政直[カノマサナオ]
1931年生まれ。早稲田大学名誉教授。専攻は日本近現代史、思想史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kentaro mori
4
●「祖国復帰運動の根幹に横たわっているのは、ぼくたちは日本人だから日本に帰るんだ、ということであった。(中略)その代わり、当然の結果として、なぜぼくらは帰るのか、という問いをぎりぎりの線まで問いつめることをしなかった。「日本人」なんだからという答えにぶつかると、それまでであった。肯定的な認識を一度でも否定のバネでもってはじき返すことをしなかった。ぼくたちは本当に日本人なんだろうか、日本とはいったいなんなのか、ということを問うことをしなかったというよりも、無意識のうちに考えることを避けてきたように思えてなら2023/10/23
ふら〜
2
タイトルの通りであり、沖縄のアイデンティティや共同体意識、本土復帰に当たっての複雑な県民感情など、その時々の代表的な思想家の考えを記載して通史的に思想を辿る。基地問題も相まって複雑な様相を呈しているのが分かる。2022/11/23
林克也
2
この本を読んで、沖縄戦とその後の沖縄の実状について知識は得られたし、怒りや絶望感も強く感じたが、どうしても他人事としてしか捉えられない自分がいる。鹿野さんは「傍観者は加害者」と書いているが、現実には、私(たち)のような“本土人”も、形は違うが同じ根の巨大な暴力にさらされていて、正常性バイアスによりそれを感じない・気づかないフリをしているだけの「ソフトな被害者」であり、自分を傍観して時間を浪費し息だけしている生ける屍ではないのか。この、巨大な暴力装置に抗わなければ、と思っても、何もできない自分が情けない。2018/09/25
taras_saco
1
戦争については学んでいたものの、1990年代以降の、憧れやリゾートとしての沖縄しかよく知らなかったのだなぁと…講演録を基に補記された本著は、著者の「本土人」がどこまで深く理解できているか、という留保を常に持ちつつも、丁寧に文献を紐解いて沖縄思想を明らかにしており、戦後の沖縄を、概括的にではあるが知ることができた。2022/06/23