出版社内容情報
ヨーロッパによる「発見」以来、約500年のラテンアメリカの歴史は、私たちに何を問いかけるのか。長年「発見」される側に寄り添う視点から考察を重ねてきた著者が、既成の歴史観に根底的な問い直しを促すユニークな講義録。
内容説明
ヨーロッパによる「発見」以来、約五〇〇年にわたるラテンアメリカの歴史は、私たちに何を問いかけるのか。征服、植民地化、独立闘争、アメリカの「裏庭化」…、さながら「近代」そのものを象徴する歴史過程の中で、人々はいかに生きてきたのか。メキシコを主なフィールドとし、「発見」される側に寄り添う視点から長年にわたり考察を重ねてきた著者が、既成の歴史観に根底的な問い直しを促す講義録。
目次
1(インディオ世界との出逢い;「ラテンアメリカ」、そして三つの「場」;「自然空間」としての「新大陸」;「野蛮」の捏造と「野蛮」への恐怖;植民地の秩序形成 ほか)
2(独立と白色国民国家構想;野蛮の清算、そして白色化;近代化のなかの先住民社会;白い資本と村;軍事独裁と裏庭化 ほか)
著者等紹介
清水透[シミズトオル]
1943年長野県生まれ、東京育ち。東京外国語大学大学院修士課程修了。メキシコ大学院大学エル・コレヒオ・デ・メヒコ歴史学博士課程修了。東京外国語大学、獨協大学、フェリス女学院大学を経て、慶應義塾大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
81
南北アメリカの 特に先住民の歴史は、我輩の読書のテーマの一つ。欧米の植民地政策の エグさ! キリスト教の宣教は露骨に植民地政策に加担してる。苦悩と悲惨に満ちた歴史。ラテンアメリカは今 変貌を遂げつつあり、体制の液状化の様相を呈しているとか。当たり前だが、今も受難の歴史が築かれ津々あるのだ。2021/04/07
翔亀
45
【始原へ16】アマゾン熱帯雨林やリョサなどラテンアメリカ文学を読んだりすると、ラテンアメリカ史はどうなっているのか気になってくる。しかしコロンブス以来のマヤやインカ文明の破壊、その後に比較的早く独立したのはいいが革命と軍事独裁の連続という政治的混迷、さらには米国支配下の債務危機やら麻薬やら、断片的に耳にする情報を繋ぎ合わせても焦点は結ばず、混乱するばかりだ。そんな中、本書はラテンアメリカの500年史を見通して一つの明快な像を提示してくれる。なぜこんなことができたのかは明らかだ。視点にブレがないからだ。↓2021/05/25
もちもちかめ
15
半年ずっと読み続け、やっと読み終わる。知らなかったことがたくさんある。ラテンアメリカの専攻の同僚が知らない著者だというのが少し不安でしかもかなり思想的にはマイノリティに偏っている(インディオとアイヌの近似を強く想起させてくる)このタイミングでコロンブスというタイトルの曲を世に出そうとする日本人向けのアーティストには、がっかりすると同時に、同じくらい無知だったと思い知る。また、メキシコ人の同僚に酷い植民地支配だったんだねー!と話しかけると、本人は、そこまで嫌悪感はないと。なぜなら自分にはフランスとポルトガル2024/08/15
ふぁきべ
10
他の人が書いているようなラテンアメリカ入門として適切な本かどうかはわからないが、ラテンアメリカに興味がある人は必ず読むべき本であるという点については意義をはさむ余地がない。著者の研究フィールドの中心であるメキシコが記述の中心だが、メソアメリカの状況を表す代表例として大きく間違っているとは思わない。いずれにせよ本書を読んだことでいろいろなニュースを見聞きする際のとらえ方も変わってくるように思う2024/04/29
筑紫の國造
8
事実を詳細に追った歴史書というより、著者の視点から中南米の歴史を省察する。著者の体験からメキシコの話が多いが、その時代における歴史的な流れの中で各国の状況を叙述している。実体験を踏まえた文章は読みやすく、また「歴史の見る目」を養ってくれる本でもある。一見日本とは関係なさそうな中南米の歴史が、実は微妙に関係していることも気づかされる。その点では、かなり有用だと言える。ただ、著者の歴史観はどうにもポストモダン的(?)というか、「被害者と加害者」の視点が強く、かなり強引に日本と結び付けている感は否めない。2020/04/03