内容説明
日本を代表する心理学者・河合隼雄が、ユング派分析家の資格取得論文のテーマとしたのは、日本神話であった。日本人の心理の深層に存在する日本神話の意味と魅力を、日本の読者向けにわかりやすく語る。太陽神アマテラスはなぜ女性なのか?ツクヨミの日本神話における役割とは?トリックスター、英雄など様々な顔を持つスサノヲとはいかなる神か?世界の神話・物語との比較の中で『古事記』『日本書紀』を読み解き、日本人独特の心性の深層にせまるとともに、現代社会の課題を探る。
目次
日の女神の輝く国
世界のはじまり
国生みの親
冥界探訪
三貴子の誕生
アマテラスとスサノヲ
大女神の受難
スサノヲの多面性
オオクニヌシの国造り
国譲り
国の広がり
均衡とゆりもどし
日本神話の構造と課題
著者等紹介
河合隼雄[カワイハヤオ]
1928年兵庫県生まれ。京都大学理学部卒業。1962年よりユング研究所に留学、ユング派分析家の資格取得。京都大学教授、国際日本文化研究センター所長、文化庁長官を歴任。2007年7月逝去
河合俊雄[カワイトシオ]
1957年奈良県生まれ。京都大学教育学研究科博士課程中退。チューリッヒ大学(Ph.D.)。ユング派分析家資格取得。現在、京都大学こころの未来研究センター教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nobi
78
杵築、ウタキ(「魂」の思想史[酒井健著]より)といった日本古来の清々しさに触れてみたいと思っていた身に正にフィットした書。ユング派分析家資格取得のための論文が元になっているからか、一般向けとしては事実検証、論理展開が周到過ぎではと思いつつも、しなやかで核心を見据える論考に痺れた。性*と笑いという切り口、神々の名が連なる理由、「見畏む」態度と「恥」の感覚、生と死の分離から海と陸の分離へ。「中空構造論」という発想。古事記の厳しい漢文から立ち現れるどこかあっけらかんとして強靭な生命力は、清々しさと相通じていた。2017/07/15
rokoroko
16
ユング心理学は私の10代後半20代前半にブームだった。時代はバブル。今映画「スズメの戸締り」みてなにか神話のようなものを大衆が求めているのかなと思い読み返す。友人も上代の神話をかの映画に感じたと言っていた。面白い2022/11/26
roughfractus02
12
著者は『古事記』の神々の関係にトライアッド(三角関係構造)を見出す。それはR・ジラールが見出した矛盾としての第三項を排除する一神教的「中心統合構造」と対照されて、第三項を「無為」化することで全体を調和させる多神教的「中空均衡構造」と呼ばれる。論理的整合性ではなく、全体の調和の美を重視する点に『古事記』での権力維持の構造の特徴がある。現行の天皇制の肯定という議論もあるが、西洋の論理的整合性を取り入れる近代以後も、臨床家である著者は、現代人の心に調和の美を維持する物語を通してこの構造が作動する様を注視する。2022/12/16
aiken
12
2003年の本。なぜ自分が古事記が好きなのか解説してくれる本。かなり面白い。天地、男女、生死、昼夜、山海などの二元軸、その二軸をバランスさせる一見役に立たない軸が三元軸となり中空構造を形作る。日本神話は常にこの三元を繰り返しながら進み、人間の意識の進化の過程を物語る。悪者を創らず善悪では物語を進ませない恥と怒りと畏む我が国の文化と説いていた。心理学者の読み方に感服。蛭子も含めた二重らせん構造でもいいかも。解説にある「神話は、とりわけ日本人にとっては、心理学の要石」。この要石がボクを古事記に惹きつけている。2021/06/06
YúKa(ユーカ)@ハガレン読み終えました
12
河合隼雄さんらしく、内容が濃かった。2016/11/12