内容説明
ペリー来航の年、岩手陸中海岸沿いの地域で起きた「三閉伊一揆」を率いた百姓命助。逃走・潜伏生活のすえに捕らわれた獄中で書き残した記録や、現地調査をもとに、命助の波瀾に富んだ生涯を詳しくたどり、維新前夜の農漁村に生きた人々の暮らしの実態、彼らの世界観、時代のうねりを生き生きと描き出す。日本近世史研究の成果が生んだ名著、待望の文庫化。新稿「幕末民衆の『極楽世界』」を収録。
目次
1 栗林村と命助の家筋
2 「東」の人びと
3 先行する者―弘化四年の一揆
4 同行する者―嘉永六年の一揆
5 出奔
6 修験者明英
7 二条殿家来三浦命助
8 牢の中
9 「極楽世界」へ
著者等紹介
深谷克己[フカヤカツミ]
1939年、三重県生まれ。早稲田大学大学院文学研究科史学(日本史)専攻博士課程修了、文学博士。早稲田大学名誉教授。日本近世史専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ばんだねいっぺい
18
一揆について、余りにも無知だった。イメージがいい意味で覆った。百姓命助の生涯。遣りきれないところもある。2016/05/24
iwasabi47
3
佐々木喜善から柳田が聞き書きしたのは明治41年、佐々木は1886年明治19年生、この本の主人公命助は1864年元治1年に死す。佐々木と命助は2世帯間。喜善の祖父母達は命助達一揆勢が遠野で逗留したのを見たかもしれない。『遠野物語』と一緒に読めば、より立体的に「遠野」を「百姓」を理解できるかもしれない。神話世界ではない。2023/03/26
belier
2
大江健三郎が小説のヒントを得た人物であろうと考え読んだ。そのことより面白かったのは、江戸時代の農民がとてもダイナミックな暮らしをしていたこと。網野善彦の著書でも言われていたことではあるが、具体的な人物の伝記は説得力がある。また命助の独自の宗教観も興味深く、カルロ・ギンズブルグの『チーズとうじ虫』を思い出した。それにしても、偉人とまでは言えない庶民の手紙類がずっと残されていたのは素晴らしい。日本の政府は文書を破棄したり、隠蔽したりするが愚かなこと。歴史書に書くものがない薄っぺらな国になってしまうと思う。2021/09/29
muny
0
そうであろうと、予想していた民衆の強かさ、南部藩という体制の時代遅れさよ。既に貨幣経済に移行していたにもかかわらず、個人の能力を発揮させる方向でなく土地に縛りつけ、臨時課税を頻発するしか能がない。三浦命助は自分の経験と見通しを持って敢然と行動した。10年遅くに生まれていれば、というのは簡単だけど、人はその時代から逃れることはできない。我々も同じ。政府の大量の国債発行、毎年その場しのぎに見える施策。強かに生きねばと、静かに思った。2022/08/13
-
- 和書
- 小説「そごう」崩壊