内容説明
現代世界を支配してきた機能的な均質空間の支配に抗して、著者は新しい「場」の理論を構想する。工学的な知識はもとより、哲学、現象学、仏教学などの知見を駆使、長年にわたる集落調査の成果にも依拠して、著者は設計の現場から二十一世紀の建築は「様相」に向かうというテーゼを発信する。著名な建築家の手になる野心的な哲学的著作。
目次
均質空間論 1975
“部分と全体の論理”についてのブリコラージュ 1980
境界論 1981
機能から様相へ 1986
“非ず非ず”と日本の空間的伝統 1986
著者等紹介
原広司[ハラヒロシ]
1936年神奈川県に生まれる。建築家。東京大学名誉教授。70年代に世界の集落調査に従事。また80年代以降の創作活動の中軸にある「多層構造モデル」は国の内外で大きな反響を呼んだ。主な作品にヤマトインターナショナル東京本社、飯田市美術博物館、梅田スカイビル、JR京都駅、宮城県立図書館、札幌ドーム、東京大学生産技術研究所などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ksg
4
集落調査からモダニズム以降の建築の向かうべき道を考察し続けた原広司の論文の集大成が文庫で出版されたもの。これが文庫で読めるというのは素晴らしいことなのではないかと思う。ただし原広司さんは哲学の分野にも精通しているため、建築を学ぶ人間からしても理解するのは非常に難しい。しかし比較的平易であると思われる均質空間論、境界論、そして本書の寛容であり原氏の1つの到達点ともいえる<様相>に関する記述だけでも十分に価値がある。何度も、根気よく読んで理解を深めていきたいと思う。2012/06/19
Auristela
2
エレクトロニクスの時代は開けたばかり。2014/11/03
KakeruA
2
サービスデザインを考える上で。本書では近代建築から現代建築への移ろいとして、機能的な空間から様相的な(現象的に立ち上がる諸関係を孕んだ)空間へ移ろうと説く。機能空間はいくら切断して生成されようが必ずその周縁に「経路」が発生し、一連の空間図式を生む。場面と場面を繋ぐその経路を積極的に回収し、設計して行くことがインタラクションデザインだと言え、その経路の発見から場面までを直接的に設計して行くことがサービスデザインかもしれない。2013/02/17
わたる
2
建築家・原広司が独自の空間哲学を展開する主著の文庫版。過去に書かれた5本の論文が収められている。世界中の集落を旅してその在り方を理論化した著者が、文化人類学・現象学・仏教学などの広い視座から、機能的な均質空間をつくる近代建築を見直して新たな空間を構想する。近代建築に対して現代建築は境界が曖昧で複雑な「様相」に向かう、らしい。難しい…。2012/05/25
hondo4u01
0
未読あり。P30から2009/06/15