出版社内容情報
笹原 宏之[ササハラ ヒロユキ]
著・文・その他
内容説明
「漢字ハカセ」と呼ばれた少年が「好き」を仕事にするまでと、漢字学者としての現在を語る。漢字好きになった少年時代、漢字の情報を集めながらも進路を暗中模索した10代、仕事で漢字に向き合ういま。64画もある漢字とは?秋桜と書いてコスモス?方言漢字、幽霊文字って何?昭和から令和へ、時代を映した具体的な文字も紹介。
目次
1 蛸と鮹―マンガのタコと辞典のタコ
2 秋桜と書いてコスモス―こんな当て字は許せない
3 〓、〓、〓―全一三巻『大漢和辞典』にもない漢字
4 脣から唇、膚から肌へ―当用漢字から常用漢字へ
5 早慶は〓〓?―大学生活で出会った漢字
6 〓―俗字や国字は、何かしっくりくる
7 腺、〓の追跡―個人文字の広がり
8 妛、腥―幽霊文字、人名用漢字と向き合う
9 粁、蛯―博士論文と北海道の蛯天丼
10 麺、混む―時代とともに「常用漢字」も変わる
著者等紹介
笹原宏之[ササハラヒロユキ]
1965年東京生まれ。早稲田大学社会科学総合学術院教授。博士(文学)。ティーチングアワード受賞。日本語と漢字の研究者。著書に『国字の位相と展開』(三省堂、2007年、第35回金田一京助博士記念賞、第11回立命館白川静記念東洋文字文化賞受賞)など多数。漢字に関する政策作り、教育、学会、教科書・辞典編纂、普及啓発の活動にも携わる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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へくとぱすかる
56
64画の漢字を知った中学の図書館、『大漢和』に初めて触れた高校の図書館が懐かしい。とくに国字には関心があったから、『国字の字典』『日本人の作った漢字』も専門外で自分の仕事にも無関係なのに読んだ私。ついに笹原先生の『国字の位相と展開』に出会ったときは、これぞ運命だと、あの分厚い本を買いました。以来すっかり笹原先生の著書が気に入って読みあさっています。漢字専門の研究者は、意外にもごく少数の存在らしいですが、熱の入った半自伝的紹介に圧倒されました。気象台の国字は、単位の本にもあり、学際的研究の大切がわかります。2023/01/05
井月 奎(いづき けい)
43
物知りの子供、いわゆる「ハカセ」が「博士」になります。漢字好きの少年時代、それがこじれ……もとい高じて専門に学ぶことになる大学時代と、時間を過ぎるごとに病膏肓に入りすごいことになっていきます。いやあ、変わった人と言えば言えるのですが、あこがれます。自分の好きなことを見つけて一生をかけて学び、さらには教えていく。すてきだなあ。漢字に未来の可能性を見出しているのもとても素敵に思います。2022/11/26
さとうしん
10
国字などの研究で知られる笹原宏之氏の自伝。「漢字博士」だった少年時代から研究者に脱皮していく過程を、氏の主要な研究成果を交えつつ振り返る。マニアが研究者になっていく様子、そして研究者の歩むキャリアの一典型がうかがえる。2022/03/29
さとみなおと
3
今年読んだ本の中でノンフィクションでは一番おもしろい。読み始めてすぐにリーディングゾーンに没入し、数時間であっという間に読み終わった。好きなことを突き詰めていけば人生は楽しくなる。人生を楽しむことを諦めなくていいんだな。後書きでの著者から中高生へのメッセージに感動したので引用。「対象は何でもかまいません。何時間でも向き合えるものがあれば、それはきっと自分に合っています。過去のことまでよく研究して、現在、そして未来へと自分らしくつなげていく心ある若者が出てくることをずっと待っています。」2024/02/13
erie
2
研究者になったことが肯定的に書かれていることが示されるタイトルであり、子供時代の漢字オタクエピソードから、ちょっと不穏な中学時代に差し掛かっても、冒険譚のように安心して読める。総合的にはこの方には、いろんなものが味方したように思う。2023/05/21
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- 和書
- 千年の夜明け