出版社内容情報
強者が押しつける「正しさ」と暴力や分断がはびこる現代社会。そこで置き去りにされているのは、尊厳を踏みにじられた人々が紡ぐ〈小さな物語〉――恐ろしい怪物の物語として知られる『フランケンシュタイン』を、10のテーマを通して多様な作品群と縫い合わせ、読む者をケアの本質へと誘う。想像力を解き放つ文学論。
【目次】
はじめに
1 戦 争
『進撃の巨人』『三ギニー』
1 「壁」を乗り越えて――小さな物語へ
2 アウトサイダーの女性たち
3 『フランケンシュタイン』――生の平等を問う
2 論破と対話
『もうひとつの声で』『バービー』『バタードウーマン』
『バグダードのフランケンシュタイン』
1 関係性を結んで対話する
2 対話と共話
3 ヴィクターがSNSを使えたなら
4 『バグダードのフランケンシュタイン』
3 親ガチャ
『親ガチャの哲学』『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』『波』
『山上徹也と日本の「失われた30 年 」 』 『SPY×FAMILY』『キン肉マン』
1 共同体幻想を打ち砕く人間の流動性
2 「これからの時間」を生きるために
3 「無敵の人」としてのクリーチャー
4 ジークの反出生主義とアーニャの反・反出生主義
4 マンスプレイニング
『哀れなるものたち』『吸血鬼ドラキュラ』
1 “声”とは何か
2 エドワード・トレローニーの誹謗中傷
3 『哀れなるものたち』と女性たちの声
4 愛と自由について語る
5 レイシズム
『ウォッチメン』「オジマンディアス」
1 レイシズムとは何か
2 『ウォッチメン』は何をケアするか
3 タルサ暴動を語り直す
4 『フランケンシュタイン』におけるレイシズム批判
6 インターセクショナリティ
『カラーパープル』
1 インターセクショナリティとは何か
2 “声”を獲得していく物語
3 『フランケンシュタイン』のインターセクショナリティ
7 愛
『ワンダー・ウーマン』『もう一人、誰かを好きになったとき』
『鬼滅の刃』『偽姉妹』
1 ゼロサム的な恋愛に抗して
2 ポリアモリーとは
3 メアリ・シェリーの愛の実践
8 エコロジー
『優しい語り手』『オーランドー』『センス・オブ・ワンダー』
1 エコロジー運動の黎明期
2 ワーズワスからウルフまで
3 カーソンの『センス・オブ・ワンダー』
9 ケアの倫理
『虎に翼』『ダロウェイ夫人』
1 〈ケアの倫理〉とは何か――『虎に翼』とケア
2 弱者の「声」に耳を澄ませる
3 『フランケンシュタイン』に描かれるケアの倫理
10 アンチ・ヒーロー
『僕のヒーローアカデミア』『外套』
『「性格が悪い」とはどういうことか』『ベル・ジャー』
1 アンチ・ヒーローとは
2 “ギフテッド”の功罪
3 なぜ