出版社内容情報
暗黙のうちに男性主体で語られてきた歴史は、女性史研究の長年の歩みと「ジェンダー」概念がもたらした認識転換によって、根本的に見直されている。史学史を振り返りつつ、家族・身体・政治・福祉・労働・戦争・植民地といったフィールドで女性史とジェンダー史が歴史の見方をいかに刷新してきたかを論じる、総合的入門書。
内容説明
暗黙のうちに男性主体で語られてきた歴史は、女性史研究の長年の歩みと「ジェンダー」概念がもたらした認識転換によって、根本的に見直されている。史学史を振り返りつつ、家族・身体・政治・福祉・労働・戦争・植民地といったフィールドで女性史とジェンダー史が歴史の見方をいかに刷新してきたかを信じる、総合的入門書。
目次
第1講 女性史研究の始動―世界と日本
第2講 第二波フェミニズムと新しい女性史
第3講 ジェンダー史
第4講 歴史叙述とジェンダー
第5講 家族を歴史化する
第6講 近代社会の編成基盤としてのジェンダー
第7講 身体
第8講 福祉
第9講 労働
第10講 植民地・戦争・レイシズム
著者等紹介
姫岡とし子[ヒメオカトシコ]
1950年、京都市生まれ。現在―東京大学名誉教授。専攻―ドイツ近現代史、ジェンダー史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ネギっ子gen
53
【そもそも女性史は、価値自由とはいえない女性の視点を打ち出したからこそ、「中立」だとされていた従来の歴史学が男性に標準を合わせたものであることを明らかにできた】ドイツ・ジェンダー史の専門家が、女性史・ジェンダー史の軌跡とその成果を紹介した新書。巻末に、参考文献。<1.女性史・ジェンダー史の誕生の経緯とその展開を歴史学全体の変遷と絡めながら描き、2.女性史・ジェンダー史研究が、いかに歴史学の考察範囲を拡大し、歴史の見方を変え、歴史学に刷新をもたらしてきたかを、これまでの研究成果を述べながら示したい>と――⇒2024/04/27
さとうしん
15
取り上げる地域は近代以降の欧米、就中ドイツ、そして日本とほぼ限られているが、テーマは歴史教育、家族、労働、植民地・戦争・レイシズムといったように幅広い。フランス革命によって女性が政治に関与する幅が却って狭くなったこと、外交史などジェンダーとは無縁と考えられてきた領域でも新しい視点が提示されていること、ルイ14世の服装から見出せるジェンダー、一定不変と思われてきた男女の身体観の変化、女性参政権の実現が女性の戦争協力の直接的な帰結とはいえないこと等々、興味深い指摘が多々見られ、啓発性に富む書となっている。2024/02/25
amanon
8
ジェンダー史をコンパクトにまとめた良書と言えるか。これまで女性がいかに理不尽な差別をうけ、性暴力を含め、様々な暴力にさらされてきたかという史実に、今更ながらに驚愕。そして、そうした傾向に、宗教や、本来なら明確なエビデンスによって立証することを使命とするはずの科学までが加担してきたという事実は、非常に重たい。そして、そうした疑似科学に惑わされる傾向は、今の現在も息づいているということに謙虚であらねばならないと改めて痛感。それから、一般的には被害者がわにいるとされる女性が加害者になりえるという指摘も重要。2024/12/27
電羊齋
8
ジェンダー史の手頃な入門書。第1〜3講では導入として、女性史・ジェンダー史の史学史としての概説が行われ、第4講以降では、歴史叙述と歴史教育、家族史、身体史、ナショナリズムと国民形成、軍事史、戦争、労働、福祉史、戦時性暴力などでの多岐にわたるジェンダー視点からの研究実践が紹介されている。個人的には、特に90年代以降の「新しい軍事史」におけるジェンダー史視点からの軍事史研究の紹介が興味深い。軍隊、戦争は「男性性」、「男らしさ」と国民形成と深い関係があることがわかり、ジェンダー史視点の重要性が理解できた。2024/03/08
田中峰和
7
第6章「近代社会の編成基盤としてのジェンダー」が面白い。ヨーロッパ近世では、イングランドのエリザベス1世、ハプスブルク家のマリア・テレジア、ロシアのエカチェリーナ2世など女性が支配者として君臨した。フランスのルイ14世は幼少期、母后が摂政となって政治を司っていたせいか、成人後の肖像画が女性以上に華美で笑える。長髪で華美なマントで身を包み、足はストッキングにハイヒール。貴族は戦う役割なのに、彼のファッションはジェンダーレスそのもの。その後、国民国家への移行により、王や貴族は軍服を着た。服装の変化も著しい。2024/03/23