出版社内容情報
パンデミックは世界を変えたのか――新型コロナの大流行を経験した私たちには、疫病と人類の関わりを問い直すという重い課題が突きつけられている。最新の知見をふまえて天然痘、ペスト、マラリアの歴史を振り返り、ポスト・コロナ社会への教訓をさぐる。パンデミックの記録と記憶を掘り起こし、未来を考えるための疫病史入門。
内容説明
パンデミックは世界を変えたのか―新型コロナの大流行を経験した私たちには、疫病と人類の関わりを問い直すという重い課題が突きつけられている。最新の知見をふまえて天然痘、ペスト、マラリアの歴史を振り返り、ポスト・コロナ社会への教訓を探る。パンデミックの記録と記憶を掘り起こし、未来を考えるための疫病史入門。
目次
序章 パンデミックが問うていること
第1章 新型コロナのパンデミック―二一世紀の新興感染症
第2章 天然痘のパンデミック―「世界の統一」から根絶への道のり
第3章 ペストのグローバル・ヒストリー―パンデミックの記録と記憶
第4章 マラリアは語る―「開発原病」というリバウンド
終章 疫病史観をこえて
著者等紹介
飯島渉[イイジマワタル]
1960年、埼玉県生まれ。東京学芸大学、東京大学大学院で学ぶ。博士(文学)。横浜国立大学経済学部教授などを経て、青山学院大学文学部教授、感染症アーカイブズ顧問。専攻、医療社会史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kinkin
86
新型コロナがようやく収束気味だ、新型コロナの始まりから現在に至るまでを解説、また過去に流行した感染症である天然痘やペスト、マラリアについてもその歴史を振り返る。マラリアについては現在も流行している地域がありペストも散発している。それぞれ原因は究明されワクチンや特効薬はあるもののエボラ出血熱などはギリギリのところで食い止めているようだ。世界は疫病でせいで様々な事由を歴史に残している。コロナもワクチンで安心しては行けないと思う。またどこかで大流行するような気がする。図書館本2024/02/17
coolflat
14
40頁。感染初期から問題となっていたのはPCR検査を十分に行う事ができなかった事だった。厚生労働省に集められた専門家はクラスター対策を中心とする戦略で、諸外国が進めていた大規模なPCR検査には否定的だった。政府、特に官僚はPCR検査の拡充を課題としたが、実現できなかった。新型コロナ対策は2009年の新型インフルエンザ対策を基礎としており、その背景には20世紀後半に進められた感染症対策、特に結核対策の経験があった。患者を正確に把握し対策を進める手法が日本の感染症対策の特徴で、新型コロナ対策もそれを踏襲した。2024/09/15
さとうしん
11
新型コロナとの対比から天然痘、ペスト、マラリアの流行や対策を読み解こうという試み。第一章はコロナ禍の簡潔にしてよいまとめとなっている。しかし新型コロナに関する記憶や記録は急速に失われつつあるとして、「デマ」とされた動画なども含めて保存の必要を訴える。新型コロナが中国政府によって人為的に開発されたという言説から731部隊の話などウイルスや細菌の兵器利用の試みを話題に出したり、日本による橋本イニシアティブの発想が中国に継承されているといった点を面白く読んだ。2024/01/24
Mealla0v0
5
本書は新型コロナウイルスのパンデミックを歴史化する試みだ。コロナ禍は世界中の人々に大きな影響を与えたにも拘らず、コロナに関する資料や記録を残す努力は特段なされず、むしろその記憶と記録は忘却と変形を余儀なくされている。そこで、著者は歴史学者としてコロナ禍での出来事を書き留め、資料を残し、他の感染症とを比較する。それは感染症が歴を変えたというような大文字の歴史だけではなく、人々が日々をどう過ごしたかという「小さな歴史」を掬い取ることでもある。2024/04/22
於千代
4
新型コロナウイルス、天然痘、ペスト、マラリアを取り上げ、ポスト・コロナ社会への教訓を探る。こうした○○の歴史系の本だと、古い順に並べがちだが、あえて現在進行形の新型コロナウイルスを冒頭に持ってくるところに構成の妙を感じる。まさに現代史、という印象。新型コロナウイルスを「歴史」化するためには、資料がしっかりとあるうちに検討し、今後再び起こるであろう新たな感染症に備えなければならないと思う。2024/09/22