出版社内容情報
流行の最先端をゆく高級バッグから一点モノの財布まで、革製品はファッションを彩る必需品だ。しかし、皮革文化には常に、自然破壊、動物愛護、大量廃棄といった倫理的な問題がつきまとっていた。その来歴と現在から、人々の欲望を満たすためにあらゆるものをブランディングしていく消費文化の本質を描き出す。
内容説明
流行の最先端をゆく高級バッグから一点モノの財布まで、革製品はファッションを彩る必需品だ。しかし、そこには常に、自然破壊、動物愛護、大量廃棄といった倫理的な問題がつきまとっていた。皮革文化の来歴と現在から、人々の欲望を満たすためにあらゆるものをブランディングしていく消費文化の本質を描き出す。
目次
序章 ファッションとブランド―革から考える
第1章 「革づくり」職人と「革の道」―卑賎なものからブランドへ
第2章 大量生産時代の光と影
第3章 高級ブランドとポップカルチャーの相克
第4章 二一世紀のファッションと揺れ動く「ファッション倫理」
第5章 日本の革はブランディングできるか
終章 ポスト・コロナ禍時代のファッション倫理と革
著者等紹介
西村祐子[ニシムラユウコ]
駒澤大学総合教育研究部教授。London School of Economics(LSE、ロンドン大学)にて社会人類学博士号取得(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
114
ファッションやブランドは世界の一大産業であり、特に革製品は大きな部分を占める。しかし、その歴史には皮革職人への差別に低賃金労働者の搾取、製造時の環境汚染や皮を採るための動物虐待など深い闇も広がる。ヴィーガンや動物愛護運動もあり、皮革の使用自体が罪悪視される風潮すら広まってきた。しかし皮革産業には日本を含め各国で多くの人が従事しており、倫理面からの攻撃から身を守るため改革を迫られている。昔はこうだったと変化を拒むのでなく、光あるところに必ずある影の存在を見つめ直さねばならない21世紀の現実を改めて照射する。2023/08/26
くさてる
22
ファッションの流行を支える革製品、その歴史と倫理的な問題についてコンパクトに学べる一冊。ひとつひとつの要素だけでもたっぷり語ることができる内容なだけに、ここまでまとめられると物足りなさもあるけれど、分かりやすく勉強になった。2023/11/12
たまご
16
知識のない分野なので覚悟して読みましたが,肩透かしに感じるほど,とても読みやすい内容でした.日本のみならず世界の皮の,精製され製品となる売る側の事情と,消費者の拡大やニーズの変化が描かれます.予想以上に動物愛護団体との軋轢は少なく,思った以上にサステナブルが意識された業界で,目を開かせられました.日本の皮革業界のことはほぼ知らなかったのですが,確かに長時間手をかけるほど良い,という価値観では世界に逆行している.でも,丁寧なその部分が評価されるべきでもあると感じました.2023/08/29
kenitirokikuti
12
図書館にて。2023年刊行。著者は80年代に東大大学院で宗教学を修め、90年代前半にLSEの人類学部で社会人類学の博士。その後、駒沢大で現在教授。教員としては国際NGO志望者向け英語のむずかしいクラスを担当しているようだ。人類学の方では最初に南インドを調査。のち、国際NGO関係に▲革にせよファッションにせよ、悪く言うとクローズドなギョーカイ性がありそうな分野だが、この著者の場合は英連邦周辺というフィールドから発するつながりから至った題材なので、だいぶ毛色が異なっている。ただ頁が少なく物足りない感じ2023/06/19
氷柱
8
997作目。8月3日から。皮革の歴史が綴られている一作。200ページ程度なのにやたらと肉厚に感じられた。皮革がこれまで歩んできた歴史と、これからの消費社会でどのような位置付けになっていくのかが事細かく描かれる。革製品は数多く使っているけれど、恐らくいずれも合皮であったり、ビニールを革風に加工したものだったりするので、純粋な革というところで言うとほとんど使用したことがないと思われる。革に興味を持つことができる。2023/08/05