出版社内容情報
「滅満興漢」を掲げて清朝打倒をめざし、皇帝制度を否定した太平天国。その鎮圧のために組織され、台頭する地方勢力の筆頭となった曽国藩の湘軍。血塗られた歴史をもたらした両者の戦いの詳細を丹念にたどり、中国近代化へと続く道に光をあてるとともに、皇帝支配という権威主義的統治のあり方を問い直す。
内容説明
「滅満興漢」を掲げて清朝打倒をめざし、皇帝制度を否定した太平天国。その鎮圧のために組織され、台頭する地方勢力の筆頭となった曽国藩の湘軍。血塗られた歴史をもたらした両者の戦いの詳細を丹念にたどり、中国の近代化をめぐる道程に光をあてるとともに、皇帝支配という権威主義的統治のあり方を問い直す。
目次
1 神は上帝ただ一つ
2 約束の地に向かって
3 「地上の天国」の実像
4 曽国藩と湘軍の登場
5 天京事変への道
6 「救世主の王国」の滅亡
結論
著者等紹介
菊池秀明[キクチヒデアキ]
1961年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業、東京大学大学院人文社会研究科博士課程修了。博士(文学)。中国広西師範大学、広西社会科学院に留学および在学研究。その後、中部大学国際関係学部国際文化学科講師、助教授、国際基督教大学准教授などを経て、国際基督教大学教授。専攻は中国近代史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
83
太平天国の乱の通史をまとめただけでなく、この宗教的農民反乱が現代中国政治にまで深い影響を及ぼしている事実を明らかにする点で今日的な意味を持つ。広大かつ多様な民族と社会を統一王朝下で統治する難しさと民衆暴力の恐怖を中国人の骨身に叩き込み、国民党も共産党も独裁皇帝制の変種である政党と国家が一体化した「党国体制」を採用する遠因となったのだから。もし太平天国が存続していたら、現在の大陸は欧州のような複数国家が並存していたかもしれないのだ。中国の動向が世界に与える影響を思えば、あり得たかもしれぬ歴史を考えてしまう。2021/02/12
skunk_c
66
太平天国の顛末について、その思想的な成り立ちから清との対峙、そして内紛と滅亡という展開を詳細に描く。清末期でその統治力(特に軍事力)が極めて低下しているとき、さらに同時進行でヨーロッパとも戦争をしているときに、相当な地域を押さえながら、結局清朝を打倒できなかった理由は、やはり民心を捉えきれなかったことか。男女を厳しく分けて生活させながら、洪秀全など「諸王」は多数の女性を侍らせていたという矛盾(既視感あり)や、結局人々の生活を支える生産に目が向いていなかったことが、自滅に至る原因だったように思えた。2021/02/19
kokada_jnet
63
太平天国が天下を取る歴史改変SFを、中国のSF作家の誰かに書いてもらうのを希望。(翻訳されていないだけで、そんな安易な作品は、すでにあるのかな)2021/06/14
ケイトKATE
38
清朝後期に起きた太平天国の乱は、13年にも及び2000万人の犠牲者を出した血塗られた内戦だった。指導者の洪秀全は、キリスト教の影響を受け、神ヤハウェを「上帝」として崇め布教し、清朝の圧政に苦しむ民衆の支持を得ていった。洪秀全率いる太平天国は、皇帝を頂点とする中央集権国家を否定し、「上帝」の元で人々が平等に暮らせる国を目指し清朝打倒を旗印として反乱を起こした。清朝軍を次々と破り中国南部を支配した太平天国だったが、外部勢力への不寛容さと太平天国内部の権力闘争によって自滅する形で崩壊していった。2023/06/22
Miyoshi Hirotaka
34
異文化の受容と変容のコントロールは大きな課題。中国は、キリスト教、国民国家、マルクス主義と3度失敗。毎回、内戦により多くの犠牲者が出た。その最初が170年前の太平天国の乱。キリスト教との特異な出会いにより、独自の「拝上帝教」が成立、南京を中心に勢力を拡大した。一時は、列強各国が外交関係樹立を検討するまでになった。しかし、自分と異なる他者を排除する不寛容さと権力分散により暴走を抑える仕組みがなかったことにより、各国に見限られ、内乱により自壊した。十数年の間に約二千万人の犠牲者が出た。現代中国への伏線が多数。2021/08/20
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