出版社内容情報
小林一茶はなぜ妻との交合をつぶさに書き留めたのか。生まれた子は自分の子ではないと言い張る夫と妻の裁判の行方は。難産に立ち合った医者の診療記録にみる妊婦の声や、町人が記す遊女の姿……。史料の丹念な読み込みから、江戸時代に生きた女と男の性の日常と、それを規定する「家」意識、藩や幕府の政策に迫る。
内容説明
小林一茶はなぜ妻との交合をつぶさに書き留めたのか。生まれた子は自分の子ではないと言い張る夫と妻の争いの行方は。難産に立ち合った医者の診療記録にみる妊婦の声や、町人が記す遊女の姿…。史料の丹念な読み込みから、江戸時代に生きた女と男の性の日常と、その背後にある「家」意識、藩や幕府の政策に迫る。
目次
第1章 交わる、孕む―小林一茶『七番日記』
第2章 「不義の子」をめぐって―善次郎ときやのもめごと
第3章 産む、堕ろす、間引く―千葉理安の診療記録
第4章 買う男、身を売る女―太助の日記
第5章 江戸時代の性
おわりに―生きることと性
著者等紹介
沢山美果子[サワヤマミカコ]
1951年福島県生まれ。1979年お茶の水女子大学大学院博士課程人間文化研究科人間発達学専攻修了、博士(学術)。現在、岡山大学大学院社会文化科学研究科客員研究員、ノートルダム清心女子大学非常勤講師。専門、日本近世・近代女性史。著書に『出産と身体の近世』(勁草書房、1998年、第14回女性史青山なを賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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やいっち
97
仕事の合間の楽しみで読む本じゃなく、「史料の丹念な読み込みから、江戸時代に生きた女と男の性の日常と、それを規定する「家」意識、藩や幕府の政策に迫る」という労作であり、本格的な研究書。江戸時代は女性も含め、性的におおらかだとか、呆気ラカンとしているというイメージ(先入観)がある。ホントにおおらかなのか。2020/11/02
こばまり
63
時代劇などで目にする子の間引きのシーンは、タブーを侵すが故にあのような後ろめたい表情をと思っていたのだがそれだけではない。人口減少に繋がる行為は即ち、お上への反抗に他ならない。江戸時代に抱いていたロマンが少し萎んだ。女は大変。2021/05/24
パトラッシュ
63
江戸期の性に関する書物は遊郭や春画、艶本絡みが多く対象も大名や商人など富裕層が中心だが、目線を下げて町人や農民の日常の性生活を史料をもとづいて描き出す。小林一茶のように性が家を絶やさぬためという建前に縛られた時代だが、実際には快楽としての性を求めるものが多かったことを離婚や売買春の実情から明らかにする。当時の医学は現代に比べ無に等しく、出産時に命を落とす妊婦や子供の有様は怖いほどだ。人口増のため権力が堕胎や間引きを監視するようになる実態は、時代物にある「江戸の性はおおらかだった」という常識に警鐘を鳴らす。2020/12/16
小鈴
41
小林一茶はなぜ性交渉について詳細にメモしていたのか、からはじまり最後までぐいぐい読ませます。江戸時代の性は自由と言われてましたが、武士の「家」規範が江戸末期には庶民にまで浸透し、人口政策として管理されるまでになる。農村の女性は人口増産のため婚姻から妊娠出産が管理され、都市下層社会で女性は性売買される。私娼は検挙され価格をつけられて公娼の遊所に入札される矛盾。名前、年齢、入札額などが記録され今に残る。意外だったのは江戸時代の子どもの数は3-4人。子沢山は明治の堕胎禁止が大きい。近代の産物だった。2020/12/02
Nat
37
図書館本。小林一茶の妻との記録にびっくり!他にも様々な史料があるものだと知り、驚いた。2020/10/06