出版社内容情報
1959年から行われた在日朝鮮人らの「帰国事業」.夫に同行し今も北朝鮮に暮らす「日本人妻」の思いを伝える.
内容説明
一九五九年から八四年まで行われた在日朝鮮人らの帰国事業。夫に同行し、高齢となった今もなお朝鮮民主主義人民共和国に暮らす「日本人妻」たちは、現地で何を考え、何を望んでいるのか。望郷の念、離ればなれとなった親族への思い―。六年間に一一回の訪朝取材を重ね、彼女たちに寄り添い、半世紀余りの記憶を紡ぐ。
目次
プロローグ
第1章 元山で暮らした母と娘―一九六一年、九州から
第2章 緊迫する状況の下で―「火星14」、核実験の年に
第3章 アカシアの思い出―北海道から、お腹の子とともに
第4章 “最後”の残留日本人―家族と生き別れ、朝鮮の子として
第5章 かなわない里帰り―咸興の「日本人妻」たち
著者等紹介
林典子[ハヤシノリコ]
1983年生まれ。2006年、ガンビア共和国の新聞社で写真を撮り始める。名取洋之助写真賞、三木淳賞、DAYS国際フォトジャーナリズム大賞、Visa pour l’Image報道写真特集部門金賞、NPPA全米報道写真家協会賞1位、世界報道写真財団Joop Swart Masterclass選出など、ニューヨーク・タイムズ紙、ナショナルジオグラフィック日本版、ニューズウィーク誌、デア・シュピーゲル誌などに寄稿(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
lily
99
題材はとても貴重で面白いけれど、経済状況、北朝鮮での暮らしぶり、感情がダイレクトに伝わってこないから、よく分からないままの読後感でスッキリしない。殆どの日本人妻が日本に1度も帰られないし、東京オリンピック開催も無知だったから今の日本の暮らしぶりもイメージつかないのかもしれない。平壌の高層建物群の夜景は華やかに見えるが逆方向から撮れば全く違った画になりそう。北朝鮮での取材は、相変わらず厳しい監視下にあり、かなりの手間と心配りと時間がかかり難しいよう。2021/03/11
どんぐり
76
1959年12月から84年7月に帰国事業で在日朝鮮人の夫とともに北朝鮮に渡った「日本人妻」、そして1945年の敗戦時に朝鮮半島の38度線以北に残された「残留孤児」を取材したルポ。「日本人妻」も「残留孤児」も、元をたどれば日本の朝鮮半島植民地化のツケが生んだもの。日本を離れて半世紀、国家間の関係に翻弄されてきた日本人女性が「朝鮮に渡ったことをいまどのように思っているのか」、故国を想うだけでなかなか見えてこない。フォト・ドキュメンタリーというには写真が少ないのも、取材国による制限があるのだろう。2019/10/18
fwhd8325
60
帰国事業には、以前から疑問を持っています。後にも先にも、日本と北朝鮮の思惑が合致した事業であることは間違いないのでしょう。映画「キューポラのある街」で、主人公ジュンの同級生が、北へ帰るシーンがあります。家族の表情も悲喜こもごもです。日本は、朝鮮人を厄介払いしたかった。北は国力増強のため、帰国を受け入れた。しかし、その結果は数年の後に明らかになりました。夢の楽園なんて蜃気楼よりもひどい幻です。ここで紹介された日本人妻の方々は、自身の意思で愛を貫いた結果とはいえ、やはり現実はあまりにもむごいと思います。2019/08/30
kawa
38
北朝鮮への帰国事業でかの地に渡った日本人妻9名、残留日本人女性1名を計11回の訪朝で取材したドキュメント。著者の考えの通りの抑えた筆致の陰に語らないこと・語れないことが、さぞかしあるのだろうことが連想される良書。ご高齢になった皆さんの念願の里帰りが是非実現できるように祈るばかり。もちろん写真も良い。2020/09/09
Porco
21
貴重な記録。著者が何度も北朝鮮に足を運んでいなければ、記録されることはなかったのでしょう。自由な移動ができないことがもたらす悲しみ。2021/05/10
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