出版社内容情報
華厳宗大本山東大寺。聖武天皇の発願に始まる寺院の存在意義とは何か。創建時代の歴史を解き明かす。
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感想・レビュー
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Shoji
55
書名『東大寺のなりたち』通り、東大寺創建の意義について書かれた本です。東大寺の前身寺院がいかにして東大寺として成立したか、光明皇后の果たした役割とは、目まぐるしく遷都した背景、大仏造立の意義など丁寧に綴られています。興味を持って読むことができましたが、奈良時代の歴史に多少なりとも知識のある方向けかなと思いました。2018/08/03
まさおか つる
11
聖武天皇にとって盧遮那大仏の造立はみずからの政治の帰結であること、国分寺建立が仏教による国家の繁栄とそのための人材育成を目指したものであること、『華厳経』を根本経典としながら、大乗も小乗も含め、あらゆる仏教の典籍を研究し尽くして政治に生かすようにと僧侶たちに命じたことである。2020/04/24
モリータ
8
◆著者は東大寺長老、元東大寺別当・華厳宗管長、さらにイスラム史学の研究者。◆天平東大寺のなりたち・起源について、東大寺関連の文書と聖武天皇を中心とした日本古代政治史に沿って叙述。◆建築・仏像などに関しては古層たる法華堂の須弥壇(八角二重基壇)に残る旧安置の所蔵の痕跡、大仏建立史など部分的に。◆文字通り草創期の話なので鎌倉東大寺のことは触れられていない。「東大寺通史」「東大寺の美術」といった類書を読まないと、これ一冊で東大寺滞在のガイドブックには物足りないかと。2018/08/26
月猫夕霧/いのうえそう
6
奈良時代の東大寺の歴史を、その前身となる寺の形成史も含めて読み進めていきます。文献だけでなく三月堂の修理の際の調査結果も合わせて過去を推定していくのはまさに歴史学者です。それにしても聖武天皇、字を見ると皇后の尻に敷かれていたイメージが強いのですが、政治に対する思いがまっすぐですな。2021/09/10
chang_ume
6
奈良東大寺の形成史。「金鍾山房」「金鍾寺」「福寿寺」「大養徳国金光明寺」と名称が変転錯綜した「東大寺前身寺院」問題が大きな焦点です。これに関しては現法華堂の創建年代について、須弥壇の修理調査と年輪年代法に基づく最新の知見から、聖武天皇の夭折した皇太子(基親王)の供養にまつわる天平初年説を提示。この解釈が他要素、例えば「恭仁宮式文字瓦」などといかに整合するか。さらに法華堂を含む現上院地区を、『東大寺山堺四至図』の図像解釈もふまえて、基親王供養のための「観音霊地」とする理解はインパクトあります。非常に刺激的。2019/04/20