出版社内容情報
巨匠が生涯抱え続けた大きな秘密とは? 宮廷の中で密やかに起こされた「革命」の真相に迫る、決定版評伝。
内容説明
没落の影忍びよる黄金時代のスペイン、王宮の奥で密やかに「絵画の革命」を起こしたベラスケス。画家としても廷臣としても王に重用され、後世マネに「画家たちの画家」と絶賛された人生には、しかし、生涯隠し続けた秘密があった―。絵画史の傑作“ラス・メニーナス”を導きの糸に「革命」の真相に迫る、決定版評伝。
目次
1 画家の誕生―聖・俗の大都市セビーリャとボデゴン
2 「絵筆をもって王に仕える」―フェリペ四世の肖像から“バッコスの勝利”へ
3 ローマでの出会い―ヴィラ・メディチと古代への感興
4 絵画装飾の総監督―“ブレダ開城”をピークに
5 ふたたびイタリアへ―“教皇インノケンティウス一〇世”から“鏡のヴィーナス”へ
6 封印された野望―晩年の日々と“ラス・メニーナス”
終章 晩年の活動と近現代への遺産
著者等紹介
大〓保二郎[オオタカヤスジロウ]
1945年生、早稲田大学大学院博士課程満期退学。スペイン国立マドリード大学への留学を経て、跡見学園女子大学教授、上智大学教授、早稲田大学文学学術院教授を歴任。ベラスケス、ゴヤ、ピカソを中心に、美術書の解説・翻訳などの著訳書があり、ピカソ展、プラド美術館展監修も務める。早稲田大学名誉教授。専攻はスペイン美術史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Nat
22
図書館本。画家と宮廷人の二足の草鞋を履いていたベラスケス。画家だけだったら、もっと作品を残せただろうが、宮廷人としての栄達も求めていたのは、やはりユダヤ系という出自が関係していたのだろうか。彼の子孫と現スペイン王室との繋がりなどについても触れられていて、驚いた。マドリード熱が急速に高まり、プラド美術館でラス・メニーナスを見たい気持ちが強まった。2020/01/17
kaoru
15
この一冊で16~17世紀のスペインをベラスケスとともに生きたような感慨が味わえる。フェリペ4世にその才能を見出され、ローマ遊学などを経て落日のスペイン・ハプスブルグの威光を輝かせるのに多大な功績を遺した巨匠。謹厳な性格で、晩年は王室画家としての仕事より宮廷職に労力を注がざるを得なかった。読書家であり、当時の最先端の学問にも興味を持ち、改宗ユダヤ人の家系だという説も。助手パレーハ、義父パチェーコなど周囲の人物も詳しく書かれている。何より彼の傑作の数々が8ページにわたってカラーで所収されているのが嬉しい。2018/08/03
かんがく
14
名前は知っているがマイナーな画家の伝記。「平明にして深遠、卑俗にして高貴」という評価が的を射ている。近代絵画を切り開いたのだな。スペインの衰退期の歴史を知ることもできた。2019/05/25
こぽぞう☆
13
世界で1番美しい磔刑図(ベラスケスのものは「十字架上のキリスト」と呼ぶが)、ラス・メニーナス。。死ぬまでにちゃんと観たいな〜。19世紀の技法をひとりで先に身につけてるところがスゴい。屋外で描く油絵は絵具がチューブに入ってからとの認識だったが、ベラスケスはどうやったのか?奴隷身分の徒弟なのかな?2018/10/12
風に吹かれて
12
故吉田秀和氏がベラスケスの色使いを評して「絶対色感」と言ったそうだ。なるほど、納得であり、音楽評論家吉田氏ならではの表現だと思う。廷臣としても当時の王から重用されたベラスケス。絵によって食い扶持を稼ぐ必要がなかった故、寡作であるが一枚一枚が革新的な作品を残した。現在のプラド美術館に繋がる芸術作品収集や廷臣としての仕事が、今でいう過労死につながったようだ。黙々と廷臣としての業務に勤しむベラスケスの生涯は、当時の宗教観も含めた出自が影響していたのかも知れない、という。時代背景も含めて奥の深い本だった。2018/11/02